米空母艦載機訓練の移転候補地
政府、馬毛島の半分以上を取得
政府は昨年末、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地として買収を進めている馬毛島(鹿児島県西之表市)の半分以上の土地を既に地権者から取得し、自衛隊馬毛島基地(仮称)として整備する方針を西之表市に伝えた。買収額は当初提示の3倍以上となる160億円だった。米軍の正式な了解を得た上でFCLP施設に決定する。
防衛省は、馬毛島を選んだ理由について、①米艦載機の拠点である在日米軍岩国基地(山口県)に近いこと、②種子島から12キロ離れており、現在は無人島になっていること、③地形が平たんで滑走路や施設建設が容易なこと──といった点を挙げている。
FCLPは1980年代、神奈川県の米軍厚木基地などで行われていたが深刻な騒音をもたらし地元の反発を招いた経緯があったことで、最近は日本政府の要請で東京都の硫黄島で実施している。だが、硫黄島は東京から南に1250キロと遠く、効率的な訓練をするには不便だった。
公式文書に初めて馬毛島が明記されたのは2011年で、日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書に、FCLP候補地として馬毛島の名前が記された。昨年11月に地権者と「一定の合意」に達し、所有権移転の手続きを進めてきた。
政府が合意を急いだのは、日本が一部負担している在日米軍駐留経費の交渉が、今年から本格化するからだ。トランプ米大統領は、駐留経費負担の増額を安倍晋三首相に求めており、施設選定のめどが立たなければ、交渉でのバーゲニングパワーを失う可能性があった。
ただ160億円の価格設定が適正だったかどうかの疑念は残ったままだ。買収交渉では当初、防衛省が約45億円を提示したものの、地権者側は120億円に、これまでの土地整備費などを加えた額を主張したため、共同の土地鑑定を実施するなど調整し、折り合った経緯がある。
なお、馬毛島で実施される訓練は、①戦闘機の機動展開訓練②輸送機からのパラシュート降下訓練③周辺海域での救難飛行艇の離着水訓練──などとなっている。