ナゴルノ紛争死者5千人 新戦場は「武器見本市」
ロシアのプーチン大統領は11月10日、係争地ナゴルノカラバフをめぐり軍事衝突を続けてきたアゼルバイジャンとアルメニアが完全停戦で合意したと発表した。プーチン氏とアゼルバイジャンのアリエフ大統領、アルメニアのパシニャン首相が停戦に関する共同声明に署名した。
係争地ナゴルノカラバフでの戦闘では、犠牲者が約5000人に上った。1994年の停戦合意以降で最大規模の衝突だった。
トルコが支援するアゼルバイジャンとロシアと軍事同盟を結んでいるアルメニアとの間で戦闘が続いたが、事実上の勝者はアゼルバイジャン、敗者はアルメニアということになるが、本当の勝者は戦場を「武器見本市」に仕立て世界中の軍関係者にアピールした軍事産業だったかもしれない。
とりわけ今回、注目されたのが新戦場に投入された新型ドローンだった。大体、前線部隊兵士の生死を賭けた戦いの場は最新兵器を投入することで、一気に係争地域の戦局を制したり、形勢逆転を図ったりするものだ。
これまでの使用されてきた通常兵器による攻撃だと、相手も対応能力が高く厳しい抵抗に遭遇することを想定する必要があるものの、史上初の最新兵器だとそれを突破口に一気呵成の攻撃が可能だからだ。
露メディアは10月下旬、トルコがアルメニア北西部の都市ギュムリ近郊にあるロシア軍基地(102軍事基地)に対して無人航空機「バイラクタルTB2」による挑発飛行を実施、これに対してロシア軍は基地に配備されていた地上ベースの電子戦システム「クラスカ─4」を作動させバイラクタルTB2の制御を無力化して墜落させたと報じた。
今回のナゴルノ紛争でとりわけ目立ったのが、最新型ドローン兵器の投入だ。
アゼルバイジャンはイスラエル製の攻撃型ドローンを用いて攻撃を行っていることが明らかになっている。この攻撃型ドローンはイスラエル航空宇宙産業(IAI)が開発した自爆ドローン「ハロップ」。レーダーで検出されるのを避けるため全長2・5メートル、翼の幅は3メートルほどと小型で高いステルス性を備えている。23キログラムの爆薬を積んで飛行でき、自動的に空を飛び回ってターゲットが発する電波を感知すると、突入して自爆するシステムを備えている。味方の巻き添えを防ぐため、手動で攻撃を中止する機能も備えている。ハロップの航続距離は1000キロメートルに及び、継続飛行能力は最大6時間となっている。
無人ドローンのため攻撃を行う側のリスクも小さく、コストもかからない効果的で効率的な兵器との認識が定着した格好だ。
中でも最新ドローンで注目されているのは、一気に高度を上げ紛争地の全景を確認できる小型ドローンだ。
これは超高速の戦場用ネットワーク配線から、ショットガンのカートリッジに折り畳まれて空中に発射される小型ドローンで、地上からプロペラを回して徐々に高度を上げていく必要がないことから時間の勝負となる戦闘の現場では効力を発揮する代物だ。
また「ドローンキラー」と呼ばれる銃も注目を浴びる。これはドローンの無線機能を遮断する信号を発することでドローンの操縦を無効にする代物だ。
概して最近の兵器のイノベーションは、デジタル技術と人工知能の開発や融合が大きな潮流となってきており、スーパーコンピューターやロボット技術を取り入れた兵器開発が進行中だ。
ロシアの去年の武器輸出総額は、日本円で1兆5000億円以上にのぼる。ロシアなど世界的な武器輸出国からすれば、スーツを着こなしエアコンの効いたビルの中で行われる武器見本市より新兵器の成果が如実にあらわれる戦場の方が、よほどか宣伝効果があると読んでいる。