松田学の国力倍増論(21)

松田政策研究所代表 元衆議院議員 未来社会プロデューサー

オミクロンの正体とパンデミックの終焉

相変わらずコロナ禍が続いているが、新型コロナのスパイクが32か所も変異してくれたおかげで、ACE2受容体から入るウイルスではなくなってくれたのがオミクロン株である。つまり、血管の細胞壁を破って体中に血栓を飛ばす「たちの悪い風邪」だった新型コロナが、新型コロナの病態ではなくなり、粘膜細胞から入ってくれる普通のコロナ風邪に変わってくれた。日本人なら誰もが小さいときからかかっていた風邪だ。
3回目接種が進められている遺伝子型ワクチンが免疫バランスを崩し、かえって感染を爆発させるメカニズムも最先端のワクチン学研究で明確になってきているようである。

そもそもオミクロンとは…
なぜ重症化が少ないのか

去年の夏までの第5波で重症化率は既に低下していたが、罹った人はきつい症状だった。デルタまでの新型コロナは、血栓を主体に起こってくる病態だった。これまで変異株が旧株を上書きしてきたが、ホストである人間のほうが免疫力を強めてきた。αからデルタまでは万を超えた変異が起こり、それらは武漢で最初に生まれた遺伝子の幹から発生したものだったが、オミクロン株は分子構造が全く異なる。スパイク部分での32か箇所の変異でアミノ酸が変わり、3年前の2019年までの旧型コロナの229Eと同じスパイクになった。
130年前のロシア風邪(西洋人は未経験だったコロナ風邪の始まり)は、薬もワクチンもないのに、自然に収束した。かかった人の中で広がって集団免疫になって終わり、その後も変異を続け、日本では4種類のコロナ風邪として定着していた。百年前のスペイン風邪は3年間で収束したが、これも変異を続けて毎年の季節性インフルとなっている。
そもそもウイルスは人体そのものの一部を構成するものであり、人間との共存を目指して変異していく存在だ。今回の新型コロナは当初から感染力が極めて強く、感染を人流抑制や行動制限といった人為で抑えられると考えること自体、人間の側での思い上がりだと考えたほうがよい。あっと言う間に無症候の形で社会全体に広がって集団免疫が形成され、感染は収束し、次は感染力をより強めた変異株が現れてより高い感染波となるが、これも集団免疫が形成されて収束する…この繰り返しの過程で人間の側で免疫訓練がなされる。
デルタ株までは、血管の壁にあるACE2受容体という血圧制御のところから入り、血栓を全身に飛ばして肺炎を起こす病態だったが、オミクロンはACE2に結合できなくなり、代わって、喉の粘膜にあるペプチドを分解する酵素のところに感染するようになり、のど飴が効く普通の風邪になった。ただ、荷電のプラスが強いため、粘膜に結合しやすくなり、より感染しやすくなったものである。

感染はそもそも抑えられない
感染の波が来る度にウイルスに曝露して免疫力をつけるほうがいいというのは、感染論の基本である。自然感染でシームレスにかかり続けることで、「免許更新」がなされる。今回は無症候がほとんどあり、感染しても症状が出ないことを人類が初めて目で見える形で経験している。日本人の場合、以前からの旧型コロナ風邪と、一昨年に武漢から春節で中国からたくさんの人々が持ち込んだ弱毒性のコロナウイルスに多くの日本人が感染したことで、二回ワクチンを打ったのと同じことになっていた。ゆえに、そのあとの本チャンの新型コロナでは、ほとんどの日本人がびくともしなかったわけである。
オミクロンは日本でも既に津々浦々まで広がっていて、人流抑制や飲食店での制限とは無関係に、ほとんどの人が集団感染するものだ。普通の風邪の60倍、感染力が強く、10日間で集団の50%、20日間で75%が罹る。集団免疫はあっという間にできることになる。沖縄では米軍の兵隊と言っているが、実際にはどこから来たかわからないようだ。「感染者数」が増えても、PCR検査でたまたま感染中の人が見つかっているだけのこと。PCRを増やせば「感染」が増えるという関係になる。
今回の遺伝子型ワクチンについては、その報道は強く規制されてきたが、世界的な権威である研究所がその毒性を明らかにしてきた。加えて、今回の接種で、それが免疫系のバランスを崩すことも分かり始め、ワクチン学の新しい研究が始まっているようだ。
免役には自然免疫、液性免疫、細胞性免疫の3つがある。皮膚と口と鼻は外界に接している部分なので、人体でも自然免疫が強い部分だ。最も強い免疫は食物の入り口である口であり、口腔内にものすごい免疫システムがある。皮下に打って免疫を刺激するのがワクチンの基本だが、今回はそれをせずに、いきなり筋肉に注射している。筋肉はポンプなので、数週間かけて全身の細胞膜に行き、全身で細胞がスパイクのとげを作るようになる。そのときに粘膜や口を通過せず、そこでの免疫作用を起こさないことで自然免疫が抑制されるメカニズムがわかり始めている。ブースター接種をしてかえって感染爆発が起こっている国があるのは、そのためだそうである。今まで専門家も知らなかった免疫の扉が開かれようとしており、これが世界的レベルでの「人体実験」?の成果?なのかもしれない。

キーワードは「無症候性パンデミック」…問われる政治決断
オミクロンの正体が分かってきたのに、なぜこんなに騒ぐのか。世界中で論文が出ているのに、なぜワクチンを中止しないのか。医学的にはあり得ないことが起こっており、あらゆる情報がワクチンを打たせる方向に誘導されているという指摘も出ている。
分かっている先生は多く、研究を経験した大半の医師はおかしいと感じているが、大学病院などで立場のある先生方は発言を止められたままのようだ。「当病院でクラスターが発生したら診療ができなくなる」、と。全ての医学会がこの2年、ストップしており、多くの開業医が新しい知識を勉強する機会も少なくなっているそうである。
重要なのは指定感染症の指定の分類の問題であり、発症した人が直接医師に行くようにすれば良いだけのこと。毎年インフルエンザで桁違い(1千万人以上)の患者が医師にかかっているが、医療崩壊などしていない。開業医が診られるようにすれば、全て解決する。
人間の側での免疫訓練により、新型コロナはデルタ株までに次第に軽症化していたが、オミクロンでさらに「3日も寝なくて済む風邪」になった。新型コロナをペスト並みに扱い、陽性者→保健所→隔離というプロセスが介在することで、この2年間、社会的、経済的不都合だけでなく、しなくてもいい人が重症化してきた。これは人災であり、医療常識も社会常識も無視されている。PCRによる煽りで国民は振り回されてきた。
岸田政権は新しい政策へと、早急にモードチェンジすべきだろう。為政者の仕事は、正しい感染症の知識の共有がメディアによって妨げられていることで形成されている国民の「コロナ脳」に迎合して支持率を上げることではなく、真に国民と国を守ることにあるはずだ。現状は人災であるがゆえに、政策でしか今の状況からは脱却できない。
コロナで国際的なパワーバランスも変化している。日本はいつまでもジタバタしていられないはずだ。現状は「無症候性パンデミック」。世界的なパンデミックはもう、終わった。
(本稿は井上正康・大阪市立大学名誉教授(分子病態学)の所見に基づく記述である)

松田 学
1981年東京大学卒、同年大蔵省入省、内閣審議官、本省課長、東京医科歯科大学教授、郵貯簡保管理機構理事等を経て、2010年国政進出のため財務省を退官、2012年日本維新の会より衆議院議員に当選、同党国会議員団副幹事長、衆院内閣委員会理事、次世代の党政調会長代理等を歴任。