石原伸晃氏の「参院鞍替え」宣言

自民党内批判噴出、ネット大炎上

自民党の石原伸晃元幹事長(66)が今夏、次期衆院選に立候補せず2年後の7月に予定される参院選で、東京選挙区からくら替え出馬する意向を表明した。これには自民党内からは批判が噴出、ネット上でも大炎上した。

石原氏は2年前の前回衆院選で、連続10回当選した古参議員ながら野党の立憲民主党新人候補の吉田晴美氏に3万票以上の大差をつけられ敗北、比例復活もできずに落選した。それでも、自民党は石原氏から第8選挙区支部長ポストを取り上げるようなことはせず、引き続き同氏後援会も次回衆院選での復活当選を目指し活動を続けてきた。

それが今夏、石原氏は唐突に「次期衆院選は後進に道を譲るものの政界から引退せず、参院選東京選挙区から出馬する」と根回しもないまま宣言。自民党内では反発する声が上がり、ネット上でも大炎上を引き起こした。

石原氏は元東京都知事で元運輸相、日本維新の会元代表などを務めた故石原慎太郎氏の長男。その父親の七光りをバックに当選を重ねてきた古参議員の石原氏は、自民党内でも一時、幹事長を務め主要閣僚就任など重鎮役を担った経緯があるものの、くら替えを狙う参院東京選挙区は与野党の有力候補がしのぎを削る重点選挙区だ。いくら知名度があり重責を担ってきた古参とはいえ、一方的に調整中の自民党候補者陣の中に割って入る余地はないのが実情だ。

自民党候補者選定役を担う選対委員長だった森山裕氏は、旧石原派(近未来政治研究会)の後を引き継いだ昵懇の仲だし、岸田文雄首相と旧来の親交がある石原氏とすれば、この2人に話を通せばいいだけの話と安易に考えている節があるが、現場の反発は強いものがある。

2年後の次期参院選東京選挙区では、自民党現職で厚労相に就任した武見敬三氏(71)と丸川珠代氏(52)が改選となる。丸川氏は次期衆院選で、東京7区からのくら替え出馬が決まっており、石原氏は丸川氏の後継候補としてその後釜に滑り込もうという思惑だが、丸川氏が所属する自民党最大派閥の安倍派は自派からの女性候補の出馬を狙っている。

そもそも石原氏には、気配りや深い配慮が欠落した舌禍事件が多い。

環境相だった9年前には、福島原発事故の除染で出た土壌の中間貯蔵施設に関し、地元住民との調整時に言い放った「最後は金目でしょ」という暴言は、いまでも政界の語り草となっている。

12年前の夏には、TBS系テレビで、東京電力の福島第一原発事故により汚染された土壌の保管先について「福島原発第一サティアンしかない」と発言。サティアンとはオウム真理教が、教団関連施設を呼称していたもので、第一原発で安全化のために酷暑の中で働いている方々がどう思うか考えると、とても口には出せないもので配慮を欠いたものだった。

石原氏はこの失言に関し「福島第一原発というつもりだった。単なる言い間違えだ」と言っているが、釈明にもならない弁明だった。

同時期、テレビ朝日系の「報道ステーション」で、中国による尖閣諸島侵攻の可能性を問われ、「攻めてこない。誰も住んでいないんだから」と述べ、国家主権に関わる領土問題に関し、認識の甘さを図らずも暴露する格好となった。

なお石原氏の失言中の失言とされるのが、2011年9月1日のアメリカ同時多発テロ事件についてのコメントだ。事件から9日後の10日、石原氏は青森県弘前市の講演で「産業革命から続いた西欧文明、キリスト教支配に対するイスラム圏の反逆で、歴史の必然として起きた出来事ではないか」と述べた。

「歴史の必然」として「起こるべくして起きた」というのは、政治家としての主体的な努力を、一切放棄した無責任な発言であると同時に、犠牲者への痛みの共有がなく人間としての情感の欠落が見て取れる。