永田町ファイル

記者会見 8・29

茂木敏充幹事長

緊急事態条項

【記者】今年度補正予算について。幹事長は26日の講演で、秋に経済対策をまとめて、補正予算を実行していくと述べられましたが、松野官房長官は、昨日の会見で「まだお答えする段階ではない」としています。改めて補正予算編成の必要性についてお聞かせ下さい。

【幹事長】今日の役員会で総理は、ガソリンなどの燃料油の価格対策を緊急に行い、その他については、経済対策全体の中で扱いをしっかり検討していくと発言されていて、その通りだと思っています。総合経済対策を策定したら、それは策定だけではなく当然、実行することになります。

【記者】補正予算の時期、あるいは規模について、いつ頃、どの程度が望ましいとお考えですか。

【幹事長】まだ分かりません。

【記者】ガソリン価格高騰に対する激変緩和措置についてです。政調で調整中とのことですが、政府・与党は9月から補助を拡充し、当面の想定小売価格をレギュラーガソリン1リットルあたり170円台までに抑える方向で調整に入った、との話が出ています。現在の具体的な調整状況と、高騰するガソリン価格に対して補助を拡充していく必要性について、改めて伺います。

【幹事長】今まさに調整中です。政調も今日全体会議をやり、明日政審で取りまとめ、政府に報告するという段階です。ガソリン価格は168円、170円程度に抑えられてきたのが、今、国際価格が相当上がってきて180円を超えるレベルまで来ていますので、一定の抑制策が必要です。そのレベルをどうするか、またこの対策をいつまで続けるか、まさに今、調整が行われています。

【記者】9月1日で関東大震災から100年を迎えます。それに絡んで、憲法改正により緊急事態条項を創設する必要性についてどのように考えますか。

【幹事長】わが党は、憲法改正の条文イメージとして、巨大地震など大規模災害によって緊急事態が発生した場合、国会の機能を出来る限り維持するための規定などの提案を行っています。
 今年の通常国会では、憲法審査会において、衆院15回、参院7回の審議が行われて、緊急事態条項についての議論も相当深まってきたと考えています。特に衆議院の憲法審査会では、国会議員の任期延長など緊急事態条項の「総括的な論点整理」が示され、前向きな議論が進展しています。今後も憲法審査会の安定的な開催と議論の積み重ねを図り、新しい時代にふさわしい憲法のあり方、選択肢を国民に提示するための取り組みを前に進めていきたいと思います。

【記者】先週末、弊社(毎日新聞)が行った世論調査で、内閣支持率は26%と先月から横ばいとなりました。その要因の一つとして、東京電力福島第一原発の処理水放出が始まったことが考えられ、質問項目における政府と東電の説明が不十分との回答は60%にのぼりました。今後、地元漁業者を含む国民に対して、政府が理解を広げていくべく、どう取り組みますか。

【幹事長】最近の各社の世論調査を見てみますと、ALPS処理水の海洋放出については、どの調査も「評価する」との声が、「評価しない」という声を上回っていると思っています。また、海洋放出後のモニタリング結果でも、トリチウム濃度は検出限界値を下回り、また周辺の魚からもトリチウムは不検出だったと承知しています。政府には、今後も関連するデータを透明性高く公表し、地元の方々や国際社会に対して丁寧な説明を続けてもらいたいと思います。

緊張感なき関東大震災100年

記者コラム

ちょうど100年前の9月1日、関東大震災が発生して約10万5千人が犠牲になった。この国難を克服するために大日本帝国憲法(明治憲法)に盛り込まれていた緊急事態条項に基づき、震災後の1カ月間で13本の緊急勅令が出され乗り切ることができた。世界的にも9割の国々が緊急事態条項を憲法に明記して対処している。ところが、わが国では憲法に書かれていないことが問題であると12年前の東日本大震災の際にも議論されながら対処してこなかった。

記者会見で「憲法改正により緊急事態条項を創設する必要性についてどのように考えますか」との質問が出たのは当然のことだ。にもかかわらず、自主憲法制定を党是とする自民党のトップは、あまりにも緊張感に欠けた回答しかしなかったという印象である。茂木幹事長は、提案もしているし、衆院憲法審査会で前向きな議論が行われており、今後も憲法審査会の安定的な開催と議論の積み重ねを図る、との考えを示した。

しかし、もはやその程度で済む話ではないだろう。岸田首相は「任期中に改憲する」と公言しているが、来年9月の党総裁任期から逆算すると、秋の臨時国会で改憲原案を作成し、来年1月からの通常国会で発議をしなければ公約を果たせない。それだけの覚悟とスケジュール感を持って取り組んでいるのか、という話だ。議論が前に進むだけで好評価される時代ではないことをはっきりと認識すべきである。