新型肺炎、グローバル時代リスク全体を俯瞰できる国際機関に期待
コロナ・ウイルスによる新型肺炎が世界を震撼させている。
この種のウイルスが国境を超えて動くというのは、グローバル時代のリスクでもある。海外旅行に行く人ならだれでも、いつ自分自身がウイルスをもって日本に戻り被害者だけでなく加害者になるかもしれないのだ。
グローバルな移動と交流に伴うリスクの一つが感染症ということになるわけだが、国際社会はこれに対し国際連帯税という2006年からフランスやブラジルが中心となって提唱されてきたものに今、注目が集まるようになっている。
フランスが提唱した航空券税も、同様の国際税だ。パリ空港を利用する海外旅客者らから航空券税という形で広く薄く徴収し、アフリカ熱帯症対策などのワクチン供与などの実務対策費を捻出しようというものだ。これはフランスだけでなく14カ国が動いている。
直近の状況では、EU(欧州連合)10カ国で金融取引税というものを作ってはどうかとの議論も浮上してきた。グローバル化で恩恵を享受している国は、総じてこうした金融取引税を通じた形でグローバル時代のリスクに責任を持とうというものだ。
金融取引税というのは、具体的に株購入者から0・2%を徴取するというもので、地球環境税の議論に似ている。
世界で売買されている為替取引は年間500兆ドルに上り、モノの売買をはるかにしのぐ金額となっている。それに対し薄く0・05%の金融取引税の網をかけようというのだ。この税で確保できるのは250億ドルとなり3兆円規模の資金が国際機関の下に確保されることになる。
熱帯感染症であれウイルスであれ、経済力の乏しい国が弱い対策力を露呈させ、グローバルリスクの抜け道になることだけは避ける必要がある。その抜け道をふさぐため、全体を俯瞰して手を打てる国際機関が対処していかないと、国際的なパニックになる。
「新しい葡萄酒は新しい革袋に」というが、エボラ出血熱やSARZなど、国境を超えた様々な問題が噴出するようになった現在、新時代のグローバル時代リスクをこうした形でヘッジするというのは時宜を得たものと評価できる。
少なくとも、大変だ大変だと狼狽するのではなく、冷徹に問題の本質に迫るとともに解決策を練り直さなければならない。