中台、コロナで明暗分ける?

慌てふためく中国と冷静台湾

新型コロナのウイルス問題で台湾は当初、緻密な情報収集力と手際のいい水際作戦で新型コロナ感染の制御に成功したとされたが、今年3月に海外からのビジネス客の受け入れ再開に踏み切った後、感染が急拡大している。
4月半ばに1日あたりの感染者数が初めて1000人を超えたと思えば、2週間後の28日には1万人を超え、5月27日には9万4808人と初めて9万人台を突破した。
シンガポールやタイなど周辺のアジア諸国が入国規制の大幅緩和を進めていることも踏まえ、台湾当局は規制を段階的に緩めていく構えを維持している。
落ち着き払って対処しているようにさえ見える台湾当局は、事前に国民に対し「20万人までいくかもしれない」とあらかじめ感染者数の急拡大ぶりを告知して、急速に数が増えてもあわてないように差し水を用意した。
台湾当局が感染者数の急拡大に冷静でいられるのは、コロナ株初期の頃とは違いオミクロン株など変異種は感染力こそ大きなものがあるものの、重病化させることは例外的でワクチン接種と十分な医療体制を整備さえしていれば対応できるとの確信があるからだ。
その点、「ゼロコロナ」にこだわり、身動きの取れない中国の独走は危うい。習近平国家主席は未だに、感染者が出た地域を丸ごと封鎖する「ゼロコロナ」政策を今後も徹底するよう強く指示している
2年余り前、湖北省武漢市で最初にまん延した際、都市封鎖は大きな効果をあげた。ただ感染力の強い「オミクロン型」への効果は限定的だ。それを当局が理解できないわけではない。
問題は政治にある。北京は当初、コロナ封印に成功したことを「体制の勝利」とうたった経緯がある。
それを撤回することは、「体制の敗北」を意味することになり、今秋、共産党大会を控える北京指導部にとっては悪夢に違いない。
しかし、国民の安全と幸福を保障するのが政権政党最大の役割だ。たとえ共産党が滅んでも、国民の安全と幸福が得られればいいと覚悟できれば、共産党は光り輝くことになるのだが、共産党政権の自己保身ばかりに執心している現在の様相ではとても無理だ。