恐るべきはコロナウイルスよりも「コロナ脳」

松田学の国力倍増論(20)

 「第三波襲来」…また国民の不安を煽る報道が相次いでなされたが、視聴率をとるために不安を煽るのがテレビのフォーマット。とうに集団免疫が達成されている日本でのコロナ禍とは、ウイルスよりも、むしろ「コロナ脳」だろう。ここからの脱却こそが最大のコロナ対策。増えているのはPCR「陽性者」であり、必ずしも「感染者」ではない。

 日本では新型コロナの集団免疫が達成されている理由

 「松田政策研究所チャンネル」で3度にわたり対談を発信した上久保靖彦・京都大学大学院特定教授が述べる以下の知見は、この春頃から、当時の安倍総理、菅官房長官、加藤厚労大臣には共有されていたと聞く。しかし、そこには新説を認めようとしない「専門家」たちの壁…。政権の本音は「政府からは言えない…分かってほしい」だとのこと。

 上久保説によると、インフルエンザウイルスとコロナウイルスとは相互に「干渉」し合う逆相関関係にあり、世界各国で精密にモニターされているインフルエンザの流行曲線の変化から、コロナウイルスの感染状況を正確に把握できる。新型コロナは最初はS型、そしてK型へと変異。これらはいずれも弱毒性で、S型は昨年12月に日本に上陸、世界にも広がった。その後、1月13日にK型が日本に上陸、中国近隣諸国にも広がった。3月8日まで中国からの入国を続けた日本ではK型の感染が拡大、これに対する集団免疫が出来上がったが、2月初めに中国からの渡航を全面禁止した欧米にはK型は入らなかった。

 恐ろしいのは、そこからさらに変異したG型(武漢型、欧米型)だ。K型は「T細胞免疫」を強化し、サイトカインでG型を撃退する。日本では、これが武漢G型、欧米G型を迎え撃ち、さらにG型について集団免疫が達成された。しかし、S型だけでは、ADE(抗体依存性感染増強)を引き起こす。そこで欧米では、G型でADEが起こり、パンデミックになった。これが日本の人口当たり死者数が欧米の百分の1となった原因。日本や一部の東アジアは欧米とは異なる世界にいる。緊急事態宣言も、その後の活動自粛も不要だった。

 ウイルスは人間社会に常在して変異を繰り返している。せっかくできた免疫は、これに暴露され続けることで維持される。人間をウイルスから隔絶しようとすれば免疫を廃らせるだけであり、集団免疫にある日本では、Gotoキャンペーンこそが正しい政策になる。

 真実を伝えられない専門家とメディア

 この上久保説は単なる仮説だとして、「専門家」もメディアもまともに取り上げようとしない。しかし、東京理科大学の村上康文教授が一般の日本人を標本にして調査したところ、その全員においてIgG抗体が上下する状態にあることが確認されている。ウイルスに初感染した際にはIgM抗体の数値が上がるのに対し、免疫保持者の場合、ウイルスに再感染すると、普段は低いIgGの値が急速に上がり、ウイルスを撃退し、その後、低下する。

 つまり、日本人集団免疫説は仮説ではなく、既に実証済みなのである。だが、テレビタックルに上久保先生が出演した際には、これを「仮説」とする某「専門家」に対する上久保先生の反論など、収録されていた肝心の部分はほとんどカット。テレビ局として、どこまで放送するかの方針が最初からあったようだ。やはりメディアは真実を伝えられない…。

 マスク姿でないと非難の目が向けられる昨今であるが、実はマスクの穴はコロナウイルスの50倍の大きさだ。自分の唾に混じって飛ぶウイルスを引っかける効果があるに過ぎない。そもそも風邪の原因であるコロナウイルスは、ペストやエボラとは異なる。特に今回の新型は、感染があっという間に広がり、防ぐ手立ては無い。風邪は万病のもとと言われる通り、コロナには治療薬も存在しない。ワクチンにも重症化などのリスクがあり、下手をすると前記のADEを起こす危険もあると言われる。どの国でも、ウイルスへの曝露を繰り返して免疫が更新され、ウイルスとの共存を達するしか、収束への道はない。

 「感染者が再び急増」…だが、PCR検査を増やせば、それだけで陽性反応者は増える。中には免疫がある人の再感染のケースもあれば、3か月ほどで免疫が廃れて感染したケースもあるが、いずれも抗体が撃退する。免疫が廃れても身体が免疫の記憶を持っているので、やがて抗体が出て撃退する。いずれの場合も、重症化や死亡に至ることはあまりない。現に日本では、「感染者」は増えても、日々の新たな死者が急増している状態にはない。

 対策の要諦は感染を封じ込めることではなく、重症者に対する医療資源の確保にある。これは昨年まではWHOはじめ、世界の常識だったが、武漢などの恐ろしい映像が世界中の「専門家」たちの脳をパニックに陥れたままのようだ。日本でも、2月時点で慌てていた厚労省がペストなどと同じ感染症法上の分類とし、陽性なら入院勧告を義務付ける二類扱いにした。これではかえって重症者への医療資源が不足するリスクを高めることになる。

 対策の要諦は自然の摂理に従うこと

 日本での新型コロナ死者数は二千人弱。65歳以上では一万人当たり死者数は0・3人に過ぎない。日本人は年間で一三八万人が死亡している。社会活動を止めるようなことはしていない他の死因と比べて、新型コロナでの死者は極度に少ない。しかも、他の病気が原因の重症者や死者でも、PCR陽性の人は新型コロナが原因として報告されるそうだ。

 そもそもPCR検査自体、「歴史的誤用」…DNA断片を選択的に増幅させるこの検査は、一匹か何十万匹かの定量性も、遺伝子構造が未解明な土着亜種コロナ(日本で普通の風邪の原因となっているもの)と区別する特異性も低い。筆者の大学時代の同級生で東大医学部卒の臨床内科の名医は、現状を「バカ騒ぎ」と嘆く。生物学者の某教授も、プライマー設定によって結果はバラバラ、検査技量も問われる大変あざとく難しい検査だと指摘する。

 現場の医師たちは、新型コロナの疑いがあるかどうかは診れば分かる、そこで役立つのはPCRよりも肺のCTだと口を揃える。日本は世界一、肺CTが普及している国だ。にも関わらず、メディアは「PCR真理教」一色である。そもそも対策の焦点は重症者や高リスク者への濃密な対応であり、一般の人への検査ではない。

 欧州では「感染者」だけでなく死者も増え始めているが、これは3か月を経て免疫が廃れたことによる「感染者」の増加

と、ロックダウンに際して室内にとどまり続けることができた富裕層や上流層が初感染し、一定比率で死者が出ていることによるものだと聞く。米国でもNY市のように感染が蔓延した都市部での死者は激減したが、地方での初感染の拡大が現在のコロナ禍のようだ。国を早々と閉じてADEを起こし、現在はロックダウンの副作用で死者が再び増え始めている海外と日本とでは、風景は大きく異なる。

 上久保先生によると、二〇一〇年にも同じことが起こっていたようだ。当時は海外渡航制限をどの国もしなかったのでADEは起こらず、世界中が気付かぬまま収束したとのこと。やはり、人類は自然の摂理に反してはいけないのか。国を開き、日常の活動を続けながらウイルスの変異に従って順番に曝露していくのが、収束に至るためのウイルス対策の要諦のようだ。命か経済か…その両立への唯一の道が「コロナ脳」からの脱却なのである。

松田学
松田政策研究所代表
元衆議院議員
未来社会プロデューサ
【プロフィール】1981年東京大学卒、同年大蔵省入省、内閣審議官、本省課長、東京医科歯科大学教授、郵貯簡保管理機構理事等を経て、2010年国政進出のため財務省を退官、2012年日本維新の会より衆議院議員に当選、同党国会議員団副幹事長、衆院内閣委員会理事、次世代の党政調会長代理等を歴任。

松田学