㈱エーシークリエイト 代表取締役 金川 彰氏に聞く
生産緑地法改正で弾み
今年は不動産開発の年
高止まりが期待される不動産市況だが、今年はトピックス的に上振れが期待されそうだ。30年ぶりに生産緑地法改正が行われ、緑地が宅地に変更できるようになることで市場活性化が見込めるからだ。㈱エーシークリエイトの金川彰・代表取締役に聞いた。
──不動産業のメイン業務は?
弊社は建築、売買、管理を行う総合不動産だ。
特に強みなのが、所有者から直接来る、年間7000件ぐらいの売却依頼に対応し、元付けとして投資家、業者へ紹介していることだ。
さらに戸建てやアパートなど開発にも着手し、管理自体も1800戸程度を管理している。
首都圏中心に、不動産といわれるものはすべて扱っている。
区分マンション、戸建て、一棟マンション、一棟アパート、山林含めた土地などすべてだ。
年商はグループ38億円、来期は50億円を目指している。
──今年の不動産の売れ筋は?
好調だ。今年は分譲ファミリーマンションだろう。当社が扱う7000件のうち、約6割がファミリーマンションの査定が多い。
リーマンショック後の物件の所有者たちが高齢になってきて、オーナーの資産整理などの相続者たちが多くなってきた。
住宅控除の要件変更だったり住宅ローンが1%以下で借りられるので、そこで一気に需要が高まってきたのかなと思う。
月決済ベースでいうと、60件から70件といったところだ。
──顧客もネットから?
顧客様は反響営業が主になっているが、無論、電話やラインなど、すべてお客さんに応じて対応させてもらっている。
オンラインが普及してきたので、東京の物件でも遠方の北海道から問い合わせがあっても、オンラインで顔合わせできるようになった。
ホームページを見れば顔写真ぐらいはあるが、会社の名前をいったところで、どんな子か分からない。
そもそもそういう人に自分の大事な資産を任せられるかといった基本的な問題があったが、ズームだったりオンラインが普及して、助かっている。
一昨年ぐらい前からコロナの影響もあって、接触自体が避けられがちだったが、契約も契約書を送って、会わないままできる仕組みが出来上がりつつあり、やりやすい環境が整いつつある。
オンラインが普及して、テレワークだったり、在宅率が高くなったので、正直、お話できる時間が増えた。ITの大波を体験できた昨年1年間は、いい経験になった。
不動産とITがうまくマッチングしてきた感がある。国の行政もうまくかみ合ってきた。
──今後も好調か?
正直近年は、首都圏で災害や地震などのニュースで取り上げられて怖いなと思うことはある。
うちは川上の情報を得ているスキームなので、ずっと維持出来ると自信がある。
──川上情報とは?
所有者様から直接物件を預かる事だ。C2C(個人間取引)、C2B(個人が企業に対して商品やサービスを提供するビジネス形態)か可能といったところだ。
大手不動産屋含め200社以上に物件を卸している。
──これからの不動産市況は?
大局的には、しばらく高止まりが続くだろう。
下がる要素がなく横ばい状況だが、それでも今年はトピックス的に上振れが期待できる。
22年は不動産開発の年になる。というのも今年は30年ぶりに生産緑地法が改正されることになっており、緑地が宅地に変更できるようになり、二束三文の土地が化ける。すでに大手はほとんどの有力緑地に手を打っており、大金を手にする農家が多い。
──アグリ事業の理念とは?
アグリ事業の理念は2つのNに尽くすことだ。日本と地方農業のNがそうだ。
90年代以降、活力を失い、世界の地位も下落一途だ。特に地方の疲弊は著しく、人口減少で地方存亡の危機に瀕している。日本を活性化するキーワードは、ローカルだと思う。
私は、そのローカルに着目したい。
ローカルには日本の宝がまだしっかり残っている、この宝とは、日本人が連綿と紡いできた逸品の農作物だ。
この宝である地方産品を子々孫々伝えていくことに尽力したい。
その地方の活性化は、この一次産業を豊かにすることを抜きには考えられない。
農業の活性化を促し、日本を元気にする事業を確立したい。
──アグリ事業の最新トピックスは?
NTTドコモ・暗号技術とAIを活用した高品質の野菜の栽培実験を「畑アシスト」で開始した。
高い生産性と持続可能な農業を実現する次世代施設園芸だ。
わが社がその作物の物流を担当する事になりそうだ。
──アグリ事業の強みは?
農家さんから集荷したものを仕分けして、トラックで提携先の大型量販店に卸しに行く。
野菜と果物はオールラウンドにさばく。冷凍管理もあるが その日にとれたものをその日に卸すというのが、うちの強みであり特色だ。
農家のモチベーションを上げるために、消費者の声を届けるように工夫している。
これまで農家に消費者の声がまったく届くことはなかった。だからやりがいが感じられないし、モチベーションもあがらなかった。
かつ人手不足だし、台風とか天候が荒れてくるようになった。こうした負の連鎖が、地方の活力をそぎ落としていったように思う。
一番最初にやったのは、農作物をどういう思いで作ったかという、顔写真とか動画をつけて、スーパーの野菜売り場に置くようにした。
また、どういう風にして食べればおいしいかといった動画も、またQRコードを付けて、声を届け、双方向のコミュニケーションがとれるようにした。
声でモチベーションを上げていこうというのは、僕たちがやれるところだ。
さらに、農家の人手不足を補強していくことで、農家と若手ワーカーをマッチングさせ、日本の野菜を世界に売っていきたい。安心、安全の日本の野菜は世界的にみてもニーズは高い。
ただそれでも3、4年くらいまでずっと赤字だった。それがやっと昨年から、黒字になってきた。
アグリ事業では資金力があれば、人材も確保できるし土俵がぐっと広がってくる。
その意味で不動産事業は上場を目指していないけど、アグリ事業は上場を目標に据えている。
ただ、自社のみでは上場は難しいから、同じような企業とグループを作って統合を図り上場を目指そうと思っている。自社単体でというより、仲間を集めてやりたい。
かながわ しょう
1988千葉県生まれ。聖進学院卒。アジアクリエーション協同組合設立、現在は特別顧問。㈱エーシークリエイト設立、代表取締役。日本経営者同友会特別会員。