医学博士・統合医療医師 小林常雄氏に聞く

ガンは不良少年同様愛情注げば更生する

我が国で死因トップのガンは、国民病となっている。2人に1人がかかり、3人に1人が死亡するとされる。この確率は欧米と比較しても異常だ。何が異常事態を引き起こしているのか、医学博士・統合医療医師の小林常雄氏に聞いた。

──ガンというと、悪性腫瘍のイメージだが?
悪性腫瘍と名付け、ガン細胞は死ぬまで無制限に増殖すると思われてきたが、これは間違いだ。
そもそも悪性というレッテルを貼り付けること自体、人間に考える力を失わせる非科学的なごまかしがある。
ガンは悪性腫瘍で悪いものだから、手術による切り取りや抗ガン剤とか放射線を使って死滅させるという発想が出たが、ガン細胞の生物学的な意味を正しく知る必要がある。
結論から言うと、ガンというのは確信犯的なマフィアではなく、更生可能な不良少年だ。不良少年というのは、ちゃんと正しい愛情を注げば立ち直る。

──ガン不良少年説?
ガン細胞は、実に簡単に正常細胞に戻る。
私が所属していた国立がん研究センターの放射線生物研究施設で1971年、ガン細胞と正常細胞のハイブリッド実験をやった。核ありのガン細胞と正常細胞の核抜きをくっつけると正常細胞ができる。核抜きのガン細胞と正常細胞をくっつけると、ガン細胞になるか死滅する。このことから、核の遺伝子は全く関与していない結果が判明した。
サザーランドはサイクリックAMPがホルモンのセカンドメッセーンジャーとして働くことを証明して、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。このサイクリックAMP(1mM)により 、卵巣ガン細胞が正常繊維芽細胞に戻ることをシェイは50年前、発表している。サイクリックAMPは、免疫力を支える柱だ。

──もう少し詳しく?
細胞は、細胞内小器官のミトコンドリアが酸素を使って作るエネルギー物質ATP(アデノシン三リン酸)によって活動エネルギーを得ている。
しかし、ガンになると細胞は酸素呼吸ができなくなって、ATP生産能力が落ちサイクリックAMPが減る。血中のサイクリックAMPが減れば、免疫が落ち分化誘導物質がなくなる。だから体の中でガンがどんどん増殖されるという構図だ。ガンの増殖とサイクリックAMPの相関関係は鮮明だ。
人体で最重要な第一の分化誘導物質がサイクリックAMPであり、第2がビタミンAだ。
ガン患者のデータを、調査したことがある。判明したのは、ガンになる人はほとんど例外なくビタミンAが低い。そういうことがはっきりした。
特にビタミンAが際立って多い人は、ガンになっても重症にならない傾向がある。
乳ガン5期の患者を担当したことがある。5期というのは、手術も放射線もできない末期だ。肝臓に8割転移している患者だったが、毎週ビタミンAを投与し続けた結果、子供と海水浴に行けるまでに回復した。
米ではビタミンA誘導体が乳ガン治療で保険適用される。
保険医療の日本と比べると治療費が際立って高い米だが、そのため予知・予防意識が高く、ビタミンに対する認識が日本の何倍も高い。
また高濃度ビタミンCが全てのガン細胞に効く事は、米国のガンセンターやライナス・ポーリングが20年前、証明済みだ。

──その他には?
ウイルスに対する抗酸化作用があるビタミンCや、ミトコンドリア機能を強化するビタミンDなどだ。身近な話をすると断食でサイクリック濃度は上がってくる。それで断食でガンが治ったという話が出てくるのも当然の話だ。

──近著の『今こそ知るべきガンの真相と終焉』では、ガンを検出できる腫瘍マーカー総合検診(TMCA)を書いている。
ガン組織というのは、胎児と全く同じだ。胎児は胎盤と絨毛血管で成長するが、ガンも同じようにガン組織細胞とガンのかん室、ガン血管の3つがあって、育っていくというのがはっきりしている。普通の血管は杉の木のように伸びるが、ガン血管は千曲川のように蛇行して詰まりやすい。
TMCA検査では、これらの状態を特異マーカー、増殖マーカー、関連マーカーの3つで正確に検出する。
検査結果は赤ピンク黄白の4種類に分類。これまでの経験則では、赤だと30%の人がガンに罹患し、ピンクで3%、黄色から0・7%、白は2万人から2人程度といった具合だ。
腫瘍マーカー検診というのは、正確に危険率を表す。
早期手術と言っても今の医療検査では、ガンの大きさが2、3センチのところで見つけている。
その手前の8、9ミリのところで黄色の方向にもっていけば、ガンが正常細胞に戻りやすい。
CTでは1センチごとに区切るから、8ミリを見落とすケースがある。画像診断に誤診が多い理由の1つだ。黄は4ミリ程度だ。
ガンを従来の画像診断ではなく、TMCA検査に変えれば、ガンの予知・予防ができるようになる。すなわちガンの第1次予防ができるようになる。画像診断や、病理検査にこだわりガンの第2次予防に、固執しているから、ガンにかかる人を減少させられないばかりか、ガン死を減少することもできない。
これからは、画像診断から血清生検、血液検査に変更すべきだ。私が開発したTMCA検査は画像診断の100倍の精度で、今まで2万6千人の患者を救済した実績がある。
50年前、我が国のガン患者は米の半分の10万人だった。今では、米の2倍以上の42万人。世界平均の3倍だ。先進国の中でガン患者が増えているのは日本だけだ。このような現状を放置しているのは、国の安全、国民の命と暮らしを守る政治家、国民の健康を守るべき医者の無責任さの現れだ。
歴史観や国家観の定見もないまま、現状維持に窮々としているようではだめだ。現状をダイナミックに改革する政治家、医師の出現が待望される。
生前、日本医師会会長、世界医師会会長を歴任した武見太郎氏は「これからは薬や医者がいらない時代が来る。食が重要で、健康農業が重要だ」と述べていたが、参考にすべき言葉だと思う。

こばやし つねお

1944年、鳥取県生まれ。鳥取大学医学部卒業。国立がんセンター内地留学。東京大学大学院卒業、博士号取得。NHK治療ルポ「人間はなぜ治るのか?癌からの生還」で反響呼ぶ。『今こそ知るべきガンの真相と終焉』(創藝社)など著書多数。