「ひょうたんなまず」

俳句・川柳11月号

「散歩」「テーマ自由」

俳句

秋空や トンボお供に 山登り
(山形市) 一木 伸多郎

(秋はすべてが清々しい気候である。そんな時、近郊の山に登ってみたら、珍しくトンボが近づいてきて一緒に同行してくれたというのである)

秋の蚊の ひそかに止まる 寂しさよ
(藤沢市) 木村 妙子

(今年の夏は暑すぎて押し寄せてくるはずの蚊の軍勢も気息奄々というありさまだったようだ。そんな蚊が弱々しく腕に止まった。さて、たたくべきか)

星空や 霹靂のごとき 訃報かな
(仙台市) 早坂 剛

(作者にとって重要な人物の訃報を聞いて、霹靂に打たれるような衝撃を受けたというのである)

【佳作】

夕焼けや 秋の虫たちの 合唱会
(天理市) 沓掛 僧次郎

(夜になる一歩手前は歌声喫茶か)
葡萄棚 斜めに続く 秋の山
(さいたま市) 清水 勝

(実りの秋はそれだけで美しい)
赤とんぼ 地蔵に止まる 山の里
(長野市) 木村 百濟

(かつてはどこでも見られた風景)
秋祭り 笛も太鼓も 風に乗る
(大分市) 杉崎 緑

(祭りの音が郷愁を呼ぶ)

川 柳

散歩して 徘徊老人と 間違われ
(東京都) 孤独な高齢者

(健康のために散歩をしていると、ふらふらと歩いているせいか、ボケ老人と間違われた。怒るなかれ、心配してくれるだけありがたいぞ)

はげ山や おやじの顔が 目に浮か
(神戸市) ワシの頭が薄いのは遺伝

(幼い頃は父親の頭が禿げているのが不思議だった。成長するにしたがって、髪の毛前線は後退に次ぐ後退。お父さん、ワシはあなたの子で間違いないわ)

国憂い 秋空の下に 献花せり
(東京都) 安倍元首相の冥福を祈る

(川柳は時流を詠んで皮肉やユーモアをもって世相を風刺するのだが、たまにはこうした正統でストレートな表現も悪くはない)

【佳作】

秋深し コロナ禍もはや 他人事
(東京都) 危機意識なし

(コロナ禍は相変わらずだが)
散歩という ノルマに今日も ひた走る
(横浜市) 同病相憐れむ

(楽しみではなくなったのね)
おはようと 家庭菜園が 生きがいに
(相模原市) 第二の人生は百姓

(人は何かをしていないと老けるだけ)
3年も よくぞ続いた 妻の嫌味
(宇都宮市) そろそろキレそうだ

(夫婦はお互い様だから)

【応募要項】次号のお題「戦争」

あなたの俳句・川柳をお寄せ下さい。お題に添ったものでなくても結構です。自作未発表のものをはがき1枚に3句程度まで。住所・氏名(ペンネームの場合は本名も)・年齢・電話番号明記の上で、ご投句願います。投句は返却しません。二重投稿厳禁。天・地・人の句には薄謝ないし粗品を贈らせていただきます。締め切りは毎月末。

住所 〒101─0052 東京都千代田区神田小川町3─7─16 報道ビル6F 「新政界往来」ひようたんなまず係まで。