北朝鮮の対日微笑外交
問われる日本の外交力

北朝鮮が「対日微笑外交」を展開し始めようとしている。

北朝鮮の金正恩総書記の妹・金与正氏は2月、日本との関係をめぐる異例の談話で「岸田首相が平壌を訪れる日が来るかもしれない」とコメントした。

日米韓3カ国は昨年、首脳会談を行い結束を強めている。北朝鮮とすれば拉致問題解決を迫られている日本にアプローチすれば、日米韓3カ国にくさびを打ち込むことができるとの思惑がある模様だ。

さらに北朝鮮の背中を押しているのは、キューバと韓国が国交樹立したことだ。これまで北朝鮮と同じ社会主義国家同士の連携があったキューバが、経済的恩恵を受けるため韓国との国交樹立に踏み切ったことに相当衝撃を受けたことは否めず、カウンターパワーを発揮する必要性があったからだ。このため、日本に秋波を送ることで韓国に対抗していく外交戦との見立ても存在する。

北朝鮮外交筋は日本政府に対し「対話の窓は常に開かれている。国交正常化という大局的な観点から日本は裁量を決断すべきだ」と呼びかけている。

4月には韓国の総選挙があり、11月には金正恩総書記と首脳会談を行ったトランプ前大統領の動向が注目される米大統領選挙が行われる。

そうした意味でも、今年は韓半島情勢が大きく転換する節目の年になる可能性を秘めていて、北朝鮮がどうカードを切ってくるのか注目される。

こうした中、日本の拉致被害者の家族会が条件付きで日本政府の独自制裁の解除に踏み込む方針を初めて示した。

林芳正官房長官は北朝鮮の金与正氏の談話に対し、「留意する」との方針を示す一方、「『拉致問題は解決済み』との見解は全く受け入れられない」と述べた。また家族会の方針に対しては、「拉致・核・ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向け、何が最も効果的かとの観点から不断に検討していく」と強調した。

「拉致問題は解決済み」と言い続ける北朝鮮の高いハードルをどう突き崩すことができるのか、今年は日本政府の外交戦略が問われる年になる。