臨時国会10月4日開幕へ 野党4党セットで追及 政府、冒頭から守勢の展開に

今月の永田町

 立憲民主、国民民主、共産など主要野党は10月4日開幕予定の臨時国会で、①公的年金の財政検証②日米貿易交渉③前厚生労働政務官の口利き疑惑④消費税率10%の是非──の4点セットで政府を追及する構えだ。これに対して、政府側は丁寧な説明が求められており、冒頭から守勢に回る展開となりそうだ。

 野党が国会論戦で主導権を握りたい第一の追及テーマが「公的年金の財政検証」である。

 これは、公的年金だけでは老後資金が2000万円不足するとの金融庁審議会の報告書にも大いに関係するものだ。

 厚生労働省は8月27日に、公的年金の給付水準見通しに関する財政検証結果を公表した。それによると、現役世代の平均手取り収入に対する年金受給額の割合、いわゆる給付水準(所得代替率)は、経済が成長し労働参加が進む標準的なケースだと、2047年度に50・8%で下げ止まり、政府が約束する50%以上を維持するという。また、現在より2割近く目減りするが制度の持続性は確認されたというものだ。 

 これに対して、野党は試算の前提が甘過ぎるとして「ばら色」などと一斉に批判した。立憲の長妻昭代表代行は「ひと言で言うと、『膨らまし粉』が効き過ぎている。基礎年金の下支え機能についての提言も全くない」と指摘。女性の労働参加などが進むと想定したケースでは、将来の所得代替率が50%を維持できるとしていることには「そんなばら色のことが本当に起こるのか」と疑問を呈した。

 主要野党は政府の公表を受け、国会内で合同ヒアリングを実施。5年に1度行われる財政検証の発表が、2014年の前回に比べ3カ月近くずれ込んだことについても、国民民主の原口一博国対委員長は「これが参院選前に出ていたらどうだっただろうか」と語り、政府の対応を批判した。

 これに対して、自民党内には「(年金財政は)前回からそれほど悪くなっていない」(幹部)との意見が多い。また、政府としては制度改革の検討を本格化させ来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針だが、「年金の最低保障機能の強化」や所得に応じて上限を設ける「総合合算制度」の導入などを主張する立憲など野党側との論戦は激しくなろう。

 第二のテーマは、日本が約250万トンの飼料用トウモロコシを購入することも含めた貿易交渉についてだ。安倍首相とトランプ米大統領が8月25日に、フランスでの先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の際の会談で、貿易交渉をめぐって事実上の大枠合意に達し、9月の国連総会に合わせて行われる首脳会談で協定への署名を目指すことになった。それに関連して、米国産のトウモロコシを日本企業が購入することも明らかになり、このことを野党側は問題視している。

 また、野党側は農産物、工業品などの交渉内容が明らかにされないまま協議が進められていることに強い不満をもっており、臨時国会前の閉会中審査を求めているがそれに応じようとしない与党側の姿勢を含めて批判していく考えだ。

 第三は、自民党の上野宏史厚生労働政務官が8月28日に辞任したことについてである。上野氏は、東京都内の人材派遣会社が関わった外国人労働者の在留資格認定証明書の交付をめぐり法務省に働き掛けを行う見返りに金銭を受け取ろうとした疑惑を週刊誌で報じられたことを受けて辞任に追い込まれた。同氏は「法令に反する口利きをした事実はない。このような報道となり大変遺憾だ」といったコメントを出した。

 だが、野党側は「まだ昭和のような政策をゆがめる動きが政府中枢にあることに驚きを禁じ得ない。上野氏は不正を認めたのか判然としない。記者会見なりを開いて説明してほしい」(立憲の長妻代表代行)、「辞任しても事実関係は消えるわけではない。上野氏は説明責任を果たすべきだ。政府には任命責任がある」(国民民主の玉木雄一郎代表)、「辞任は当然で、国会議員としての資格が問われる問題だ」(共産の小池晃書記局長)、「上野氏を起用した根本匠厚生労働相、安倍晋三首相の任命責任も極めて重い」(社民の吉川元幹事長)などとそろって非難しており、国会招致要求も含めて追及していく構えである。

 政府が10月に消費税率10%への引き上げを行うことについても攻勢を強めていく。先の参院選で立憲は公約に「消費増税の凍結」を明記した。消費増税できる条件としては①消費不況からの脱却②税の使い方に対する信頼回復③直間比率の見直し──の3点を挙げている。ただ、それよりも、消費税を引き上げるのではなく、金融所得課税や法人税を見直して高所得者ほど税負担を大きくする累進制の強化を主張している。

 「家計第一」をキャッチフレーズに、子ども国債の発行など家計支援策による消費の活性化を呼び掛ける国民民主も消費増税に反対の立場だ。同党としては、消費減税も景気回復策の選択肢として位置付けており、消費税率が10%に上がる10月以降に、税率を8%に戻す「減税法案」を野党各党と連携して国会提出したい意向である。批判一色でなく提案型の論戦を望んでいるからと見られる。

 これら野党の追及テーマに対しては、第4次再改造内閣の丁寧な説明が求められている。また野党の提案にも真摯に耳を傾け、よりよい政策を練り上げていく姿勢が必要だろう。安倍政権が歴代1位の超長期政権となる今国会だけに、謙虚な政権運営にも心を砕かなければならない。