キャッシュレス、消えるATM モバイル決済普及率40%目指す

 政府は出遅れたキャッシュレスの流れに乗ろうと動き出した。

 電子マネーはこれまで、交通系だったりコンビニ系だったり、いろいろ出てきているがチャージ型が主流だ。カードにクレジットや預金からお金を入れておく必要がある。一方のクレジットカードは後払いシステムだ。

 少し前にはデビットカードも出て、見た目はクレジットカードと同じだが、決裁で使用すると銀行口座から、そのまま払えるという代物だ。

 さらに、ラインペイや問題となってセブンペイなど何とかペイというのは、いわゆるモバイル決済だ。

 スマートフォンでの決済が簡単にできるようになった。この半年でモバイル決済は、一気に広まってきた経緯があるが、コードを読み込む決済形態をとる。

 ただ、このキャッシュレス決済の日本での普及率が20%と至って低い。隣国の韓国では95%だ。これほど高い理由は、馬にニンジンならぬ、消費者にぶら下げられた優遇策があったからだ。クレジットカードやラインペイなどキャッシュレス決済したら、税金控除してしまうという。こうした使えば使うほど税金が安くなる仕組みや、キャッシュレス決済時に発行される宝くじ制度を作るなど、政府主導で後押ししている。

 なおキャッシュレス決済は米国で46%、中国で66%と日本に比べ2倍、3倍以上の普及率だ。

 中国では近年、大道芸人でさえ投げ入れてもらう小銭をキャッシュレスで受け取ったりしている。大道芸人は小銭入れの籠や帽子の代わりに二種類のQRコードを置き、寄付しようと思った観客はスマホで読み取って小銭を送る。

 キャッシュレス決済のメリットは、小銭をじゃらじゃら持たなくても済むことだ。ATMでお金を下ろす機会も減り、現金を持ち歩かなくていい手軽さが受けている。

 何より盗まれないし、紛失もしないというセキュリティー上のメリットが人々の心を引き付ける。

 そうした利便性だけでなく、現実的なメリットもある。キャッシュレス決済で、ポイントが戻ってくるという。

 日本でキャッシュレス決済が普及しない最大の理由は、現金が便利な社会であるためだ。日本は、現金を安心して使える社会だ。さらに盗難が少なく、治安もいい。どこの店に行っても、ちゃんとお釣りを計算して渡してくれる。お釣りをごまかされるのではといった疑心暗鬼になることなく、安心して現金のやり取りができるのが日本だ。中国ではコンビニでもおつりをごまかされたり、偽札をまぎれこまされたりと現金決済トラブルは日常のことだった。

 ただ、キャシュレス決済は便利だといわれてはいても、実際、地方に行くと、コンビニ以外ほとんどの店がキャッシュレスに対応していない。

 地方にいって動くには、現金が必須通貨になる現実があるのだ。

 さらに現実に使える店が少ないという事情もある。

 店側が対応していない理由は、店側が決済会社に手数料を払わないといけなくなるからだ。つまり、店とすれば現金でもらったほうが利潤が多くなる。クレジットであれば、お店やホテルが決済会社に手数料を3%なり5%を払う。その負担が大きいのとキャッシュレス決済の場合は、すぐ現金化されないのでそれまで1カ月や1カ月半の間、すぐ現金が手に入らないというのも大きな理由だ。その現金のやりくりがきついと感じるフロー資金不足の業者には合っていないのだ。

 キャッシュレス決済が今、注目されているのは、来年のオリンピックや2025年の関西万博などで、政府がキャッシュレスの比率を海外並みの40%程度まで普及させようと試みているからだ。これには理由があって、観光立国を目指す政府として、インバウンド観光客が便利なようにしておく必要があるからだ。

 さらに、日本は人件費が大問題になっている。キャッシュレス決済でレジ担当者の費用も減る。企業も楽だし、人件費の抑制にもなることから政府主導で普及させようとしている。

 具体的には10月の消費税増税に合わせ、10月から9カ月間、キャッシュレス決済をすると、消費者にポイントを最大で5%返すという。そうなると10月から消費税は8%から10%に上がっても、中小のお店でキャッシュレス決済をすると、ポイントは5%還元される。そうなると、キャッシュレスで購入すると、8%から5%に消費税が下がるようなイメージとなる。