オリンピック版五輪の書 金を取るにはマラソン菌

 マラソン菌を持っている人は、マラソンが早いばかりか、マラソン菌を持つだけで、誰でも早くなる。そうした菌が発見された。

 米ハーバード大学などの研究チームが、6月24日発行の米医学雑誌「ネーチャー」に発表した。

 エリートマラソンランナーが共通して持っている腸内細菌が、マラソンなどの長距離持久走力の向上に一役買っているという。

 研究チームは2014年のボストンマラソンに参加した、エリートマラソン選手15人の、便に含まれる腸内細菌を大会の前後、2週間にわたって調べたところ、マラソン菌の実態が浮上してきた。毎日、便と向かい合っての研究は、将来、オリンピックで優勝を果たすかもしれない黄金の成果をもたらすかも知れないものだった。

 一般の人と比較して、エリートマラソンランナーの便には、ベイオネラと呼ばれる腸内細菌が多く含まれていることが判明した。これがマラソン菌で、特に大会直後に増える傾向を示していた。このベイオネラという腸内細菌をネズミに投与し、ランニングマシーンで走らせてみた。すると、投与していないマウスに比べ、走れる時間が平均13%長くなったとされる。

 この細菌の特色は、運動した際に筋肉が作る乳酸菌を食べて脂肪酸に変える能力にある。

 つまり、乳酸が増えると筋肉が痛くなったりすることで運動能力が落ちてしまうが、マラソン菌が乳酸を脂肪酸に変えることでエネルギー源になり、ベイオネラ菌を体内に持つと持久力が高まるのではないかと推測された。

 そもそもこれまで、持久走と腸内細菌の間には関係があると研究者の間では言われてきた経緯がある。

 市民ランナーの間でも、おなかを下すとなぜか走れなくなると言われてきた。

 台湾大学の研究では以前、腸内細菌をそのままにしたマウスと、一部だけ残してあとは排除したマウスでは、普通の腸内細菌が残っていたマウスの運動持久力が高いことを証明しているが、今回はその腸内細菌を特定したことが功績となった。

 これをサプリメントにして売り出すと、持久力が伸びるので市民ランナーなどの需要が殺到するかもしれない。

 さらに高齢者の運動機能にも、改善に役立てる可能性も出てきている。

 まさに腸内細菌恐るべしで、運動能力や体力、免疫力に関っている。今後の研究探索の成果が楽しみだ。