霞ヶ関ファイル

記者会見 5・27

林芳正外相

来年のG7広島サミット

【大臣】冒頭、二つほどございます。まず一つ目ですが、ロシアによる侵略が継続をし、また、避難民の状況も引き続き深刻である中、ウクライナにおける人道支援ニーズが、更に高まっております。
こうしたことから、在京ウクライナ大使館の要請を受けまして、現地で、緊急に必要とされている消防・通信関連機材、医薬品及び医療用品等の物資の輸送支援を行うため、本日、日本政府は、約166万ドルの緊急無償資金協力を国連プロジェクト・サービス機関、UNOPSを通じて実施することを決定をいたしました。
日本政府及び日本国民の心は、ウクライナと共にあります。日本は、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携しながら、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施してまいります。
それから二つ目でございますが、日本時間本日早朝、国連安保理におきまして、対北朝鮮措置を強化する米国提案の安保理決議案、これが採決に付されましたが、中国及びロシアの拒否権行使により、否決をされました。このことは極めて残念です。
一昨日や3月のICBM級弾道ミサイル発射を含めて、北朝鮮による一連の核・ミサイル活動は、累次の安保理決議に違反するものであり、日本の安全保障にとって、重大かつ差し迫った脅威であり、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であります。断じて容認できません。
安保理が、国際の平和及び安全の維持という本来の責任を果たすことを期待をいたします。政府としては、引き続き、米国を始めとする国際社会と協力しながら、北朝鮮に対し、関連の安保理決議の下での全ての義務に従うよう強く求めていくとともに、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向け、引き続き力を尽くしていく考えであります。私からは以上です。

【記者】G7サミット、来年の広島開催が決まりました。今、ウクライナ情勢が悪化している、ロシアのウクライナ侵攻が続く中で、被爆地で開催する意義と、また核軍縮ということについて、どういうふうに議論を進めていきたいかという決意、あと、日本の魅力発信とか、そういった意味で、いろいろな方も来られますので、外務省として、どういうふうに準備を進めていくお考えかお伺いします。

【大臣】世界が、ウクライナ侵略、大量破壊兵器の使用リスクの高まりといった、未曾有の危機に直面している中で、来年のG7サミットでは、侵略も、核兵器による威嚇も、国際秩序の転覆の試みも、断固として拒否をするというG7の意思を、歴史に残る重みによって示すことが重要であると考えております。
岸田総理は、来年のG7広島サミットにおいて、核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないという誓いを世界に示し、G7首脳と共に、平和のモニュメントの前で、平和と世界秩序と価値観を守るために結束していくことを確認する考えであるというふうに承知をしております。
こうした考えの下で、外務省としても、G7広島サミットの成功に向けて、万全の準備を進めていきたいと考えております。

【記者】冒頭、大臣からもご発言ありました、国連の安保理改革の関連でお尋ねします。来月、安保理の非常任理事国の選挙が行われることになっています。日本は、立候補を表明していると思うんですけれども、非常任理事国として、どういう役割を果たしていきたいと考えるか、お考えをお聞かせください。

【大臣】日本が立候補しております本年の安保理非常任理事国選挙、これが6月9日に実施をされます。まずは、この当選に万全を期す考えであり、当選後の具体的な貢献については、現在検討中でございます。
その上で申し上げますと、安保理は、常任理事国ロシアのウクライナ侵略、また、今朝の中露の拒否権の行使、そういうものに見られますように、その限界が改めて浮き彫りになっておるわけでございます。
一方で、安保理は、国際の平和と安全の維持に一義的な責任を有しておりまして、中小国、途上国等が、安保理を含む国連の役割全体に、引き続き大きな期待を持っている、これも事実であります。
こうした観点を念頭に置きながら、安保理が、国際の平和と安全の維持という本来の責任をよりよく果たすためにどうすべきか、また、安保理改革を含めて、国連全体の機能をどう強化していくべきかということに、知恵を絞っていきたいと考えております。

【記者】中国の王毅外相が、太平洋の島嶼国を順次訪問してまして、中国が、これらの国と安全保障も含んだ、新たな構想というのを打ち出すのではないか、ということも報道されています。改めて日本の立場と、どういうふうに今後の働きかけを行っていきたいか、というのを教えてください。

【大臣】太平洋島嶼国地域は、「自由で開かれたインド太平洋」、この実現の観点からも、日本にとって極めて重要な地域であり、その情勢については、一貫して注視をしてきております。
特に、中国とソロモンの間の安全保障協力協定のように、この地域の安全保障環境に大きな影響を及ぼし得る動きについては、懸念を持って注視をし、関係国との外相会談等でも、取り上げてきたところでございます。今般の王毅国務委員兼外交部長による太平洋島嶼国訪問も含めて、関連の動向について、引き続き、情報収集に努めて対応していきたいと考えております。
我々としては、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、引き続き、米国、豪州、ニュージーランド等とも連携しながら、海洋安全保障、気候変動・防災、また、持続可能な経済発展等の広範な分野で、各国のニーズに適切に応えた支援を関係省庁・団体と協力して実施するなど、太平洋島嶼国との協力関係を一層強化していく考えでございます。

【記者】北朝鮮のミサイル発射を受けて、日韓外相の電話会談が、即座に実施されまして、その安全保障分野での日韓間の連携というものが、韓国側が新政権に代わって、より良くなっているかということと、あと、そうした連携の強化が、その日韓関係全体に、良い影響を及ぼすかどうかということ、あと、韓国の報道で、朴振外交部長官の6月後半の来日というのが報じられていますが、大臣、訪韓された際に、招請もされていたと思うんですが、調整状況について教えてください。

【大臣】北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとって、日韓そして日米韓、この連携は不可欠であります。
一昨日も、今お話があったように、北朝鮮によるICBM級を含む弾道ミサイル発射を受けて、私(林大臣)は、朴振韓国外交部長官と電話会談を行いまして、北朝鮮の核・ミサイル活動について深刻な懸念、これを共有するとともに、引き続き、日韓・日米及び日韓米で、緊密に連携していくということで一致をしたところでございます。
日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題、また、慰安婦問題などによって、非常に厳しい状況にあるわけですが、東アジアの厳しい安全保障環境にも鑑みれば、このまま放置することはできないと考えております。
国と国との約束を守ることは、国家間の関係の基本であります。日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づいて、尹錫悦大統領や朴外交部長官を始め、新政権と緊密に意思疎通をしていく考えであります。
また、朴長官の訪日についての報道は承知をしておりますけれども、朴長官の訪日については、何ら決まっておらない状況です。

【記者】ウクライナの大使館の再開について伺います。ウクライナでは、日本を訪問する、希望する人たちに対して、ビザが発給できないということで、対応を求める声が上がっています。
一方で、大使館員の安全確保というのが重要な課題だと思います。大使館の再開に向けて、今の検討状況を教えてください。

【大臣】ロシアがウクライナ侵略を継続する中で、5月に入ってからも、キーウ、リヴィウなどの国内の鉄道施設が、ミサイル攻撃を受けたものと承知をしております。
政府といたしましては、現地情勢について情報収集を行うとともに、在留邦人に対する情報提供や安全確保に、最大限、取り組んでいるところであります。
また、ウクライナ政府やキーウにおいて活動を再開した各国とも、引き続き、緊密に連携をしてまいりたいと考えております。
その上で、在ウクライナ大使館の再開については、現地の情勢などを不断に注視しつつ、総合的に検討してまいりたいと考えております。