今月の永田町

維新躍進 全国政党化も視野
立憲、共産と一部連携も苦戦

参院選、自公が大勝の勢い

改選124議席を競う第26回参院選が7月10日、投開票される。政権選択選挙ではない参院選だが、首相交代という政変につながったこともある。ただ、現状は自民、公明の与党が大勝の勢いだ。一方、前回の参院選と違い、32ある1人区の多くで共闘が実現できなかった立憲民主、共産などは苦戦している。保守層への食い込みを図る日本維新の会が関東圏でも善戦しており、昨年の総選挙での躍進に続き、6年前の6議席を超える可能性が大きくなっている。

「勝敗ラインは与党で過半数」。岸田文雄首相も茂木敏充・自民党幹事長も口をそろえて公明党との合計で過半数の63議
席を目標とすることを明らかにしている。政権支持率の高い岸田首相としては「かなり低い設定だ」と自民党幹部は語る。
5月24日に開催された自民党役員会では、柴山昌彦広報本部長代理が直近のマスコミ各社の世論調査結果を報告。自民の政党支持率は、日経が51ポイント、共同が48ポイントなど。コロナ対応やウクライナ対応も高く、参院選での投票先は自民が50ポイント(日経)などと極めて高い。一方、立憲民主党の政党支持率はどれも一ケタ台で、自民が特に警戒している「維新の支持率の低下が見られる」(柴山)との見方が紹介された。
自民の今回の公約は、日本の安全保障環境が厳しさを増す中、弾道ミサイル攻撃に対処するため、相手領域内のミサイル発射基地などを攻撃・破壊する「反撃能力」を保有することを明記するのが特徴だ。防衛費は国内総生産(GDP)比2%への増額を視野に、防衛力の抜本的強化を掲げ、憲法改正は「早期に実現する」との方針を盛り込む方向である。
公明党も6月2日、「日本を、前へ。」をキャッチフレーズにし重点政策第1弾(経済分野)と2弾(社会保障分野)を発表。石井啓一幹事長は「日本の未来を担う子供たちと家庭を全力で応援する政治のメッセージが何より重要だ」と強調した。「怖いほど逆風がない。負ける気は全くしない。自民、公明の与党で圧勝の勢いだ」と先の自民党幹部は予想する。
だが、憲法改正のための国会発議には衆参それぞれ3分の2以上の議席が必要。参院では166議席以上必要だが、自公だけで届く見込みはない。今回の改選数は自民56、公明14で非改選の両党合計は68だ。選挙後、3分の2に届くためには両党で98議席が必要になる。両党本気で改憲をするなら、改選70を98に伸ばさねばならないことになるが、「それは難しいだろう」(先の自民党幹部)。つまり、結局、自公が大勝しても参院で改憲に必要な議席を確保するためには維新などの協力を得なければならないということになる。
「維新は今回、関東圏にも本気で進出する。比例代表票を1000万票取り得票数で野党第一党になりたい」と期待するのが維新1回生の衆院議員だ。維新は2日、馬場伸幸共同代表らが記者会見し、「国のかたち」「外交安保」などの項目を立てて重点的に国家像を打ち出し、本格的に「全国政党」を目指す意思を鮮明にした。
「改革。そして成長。」をスローガンに掲げた参院選公約では「将来世代への投資」を徹底するため、幼児教育や高等教育などの無償化に加えて、出産にかかる医療に保険を適用するなどして、出産の実質無償化を実現することを打ち出すとともに、安全保障では、ウクライナ情勢を受けた国民の不安を解消するために、「積極防衛能力」の整備を図るとしたほか、防衛費の増額や憲法に自衛隊の存在を明記する9条の改正に取り組むことを明らかにした。
「今回比例代表では、知名度の高い作家で元都知事の猪瀬直樹氏や歌手で俳優の中条きよし氏、野球解説者の青島健太氏、そして西郷隆盛の玄孫で元会社員の西郷隆太郎氏らを擁立する。自民党の保守層からの得票も期待できるので間違いなく全国区の政党になれる」と先の一回生は強調する。
苦戦が間違いないのが立憲民主だ。公約のキャッチコピーを「生活安全保障」とし、物価高対策と着実な安全保障、教育無償化を3本柱にした。泉健太代表は3日の公約発表会見で「円安放置の金融政策の見直し」を強調、防衛費については「総額ありきではなく、メリハリのある防衛予算で防衛力の質的向上を図る」などと語った。細田博之衆院議長が衆院選挙区定数の「10増10減」に異論を唱え混乱を招いたことや週刊誌が報じたセクハラ疑惑に関する説明をしないことから議長の資質を欠くとし、議長不信任決議案と岸田内閣不信任決議案を8日に提出した。ただ、与党に対する攻め手はこの程度で、政党の魅力や政策の中身をアピールする迫力はない。
立憲の有力支持団体の最大労組・連合(芳野友子会長)も、2日、立憲、国民民主両党との連名による3者の政策協定締結を事実上断念した。芳野氏は、地方連合会が両党候補者と個別に結んでいるとし「それで十分ではないか」と述べた。また、共産党を含む候補者調整についても各党に委ねることになった。
結果として立憲、共産両党は、懸案となっていた政権交代を実現した場合の連携の在り方については棚上げしたうえで、1人区での候補者の一本化は、勝利する可能性が高い選挙区を優先して、限定的に行う方針で一致。共産は32の1人区のうち、11選挙区で独自候補を擁立せず、立憲の候補を支援することになった。しかし、共産に「昨年の衆院選で野党連合政権構想を発表したときのときのような高揚感がない」(共産党ウオッチャー)のも確か。その時の総選挙では立憲、共産とも議席を減らした。今回、連携しても果たして効果があるのか疑問視する声が多くあるようだ。