霞ヶ関ファイル

記者会見 7・21

齋藤健法相

検察官による不起訴示唆報道

【記者】本日、2019年の参院選をめぐり、当時の河井克行法務大臣が公選法違反で逮捕され、有罪判決を受けた事件で、河井氏から現金を受け取ったとして任意で取り調べを受けた当時の広島市議に、東京地検特捜部の検事が不起訴を示唆し、現金は買収目的だったと認めさせていたことが分かる録音データの存在が一部で報じられました。大臣の受け止めと、法務省としての今後の対応について伺います。

【大臣】報道については私も承知しております。お尋ねは、現在公判係属中の個別事件に関わる事柄でありますので、お答えは差し控えさせていただきますけれども、飽くまでも一般論として申し上げますと、取調べにおきまして、任意性を失わせるような利益誘導、これは断じてあってはならないと考えています。

【記者】お答えは差し控えるということではありますが、本件について調査を行うかどうかであるとか、報道では検事1人の取り調べに関してですけれども、いわゆる被買収の被疑者、100人ほどおりまして、そうするとほかの取り調べでも行われたのではないかという疑念が当然起きてしまうと思いますけれども、これに対する対応はいかがでしょうか。

【大臣】まず、繰り返しになりますけれども、個別の事案について、私から法務大臣の立場でお答えをするのは現段階では難しいと思いますが、ただ、一般論として言えば、検察当局において、必要に応じて、私は適切に対応されるものというふうに承知しています。

【記者】検察当局で必要に応じて対応されるとおっしゃっておりましたが、特捜事件で、最高検まで決裁が上がっている事件で、検察だけで問題を済ますのでは疑念が残るのではないでしょうか。まず、法務省として把握はされていたのでしょうか。今後の対応も含めて、もうちょっと踏み込んで教えていただければと思います。

【大臣】個別のまさに係争中の話でありますので、私は検察を踏み越えて色々コメントするということはやはり差し控えるべきだろうというふうに思っておりますが、まずは検察において適切に対処されるのだろうということを見守っていきたいということであります。

【記者】愛知県が、事実婚のカップルに共同親権を認めるなど、婚姻に準じた法的保護を与える制度の創設を国に要請すると発表したことについてです。事実婚のカップルに関する制度の創設について、法務省としてどのように考えておられるか教えてください。

【大臣】事実婚のカップルにも婚姻に準じた法的保護を与える制度として、愛知県の御指摘のような制度を含めて、様々な内容が考えられるところでありまして、そのような制度は、全ての国民に幅広く関わるものであり、国民の間にも様々な意見があり得るものという認識をしています。したがいまして、国民各層の意見、国会における議論の状況等を注視していく必要があろうというふうに考えています。

【記者】今月19日、今週水曜日ですが、2019年にガーナ人の男性が強制送還される際に暴行を受けたということで国を訴えていた控訴審で、東京高裁は、入管庁の送還手続が違法であって、さらに、制圧した行為についても違法だったとして50万円の賠償、慰謝料の支払を命じたと。男性は生爪、足の爪を剥がしてけがも負っていますけれど、これについても入管庁の責任であると推認されるということを言っております。

この裁判では、制圧行為の状況の動画も証拠として出されました。非常に、男性が泣き叫んだりして、そういう行為も明らかになりました。大臣は、この動画を御覧になりましたでしょうか。それから、この判決を受けて、入管庁の責任をどういうふうに受け止めていらっしゃいますでしょうか。

【大臣】まず、判決につきましては、この判決の内容を十分に精査して、適切に対応したいという以上のことは申し上げられないわけですが、なお、本件では告知について争われたわけでありますが、令和元年に本件の告知がなされているわけでありますけれども、出入国在留管理庁におきましては、令和3年6月に通達を発出しております。

難民審査請求に理由がない旨の裁決を通知した被退去強制者に対しては、送還計画を立てた上で、送還予定時期を告知すること、それから、送還予定時期は、裁決告知から2カ月以上後にすることを原則とすることなど、既に運用を変更しております。

また、制圧についての言及がありましたけれども、この御指摘の判決については、内容を十分に精査して適切に対応するということに尽きるわけですけれど、今回の判決においては、入国警備官による有形力の行使が過剰な制圧行為であったとは判示されていないものというふうに承知しています。

(動画を)見たか見ていないかということにつきましては、私自身は見ておりませんが、事案の内容につきましては詳細に説明を受けております。

【記者】週刊文春で報じられた木原誠二官房副長官の件でお伺いします。木原副長官は、週刊文春の記事を事実無根だとして、文藝春秋社及び記事掲載に係る関与者を刑事告訴すると宣言しています。これは本来、司法警察が捜査を通じて解明すべき真実を、容疑事実そのものが事実無根なので捜査を行うべきではないと圧力をかけ、萎縮させ、捜査妨害をしているようにも聞こえます。

刑事告訴の対象とされる記事掲載に係る関与者とは、文藝春秋の記者・編集者だけでなく、取材に応じた証言者又は不審死したと報じられた木原氏の現在の妻の元夫の遺族、再捜査に関与した警察官、刑事までをも含むように解釈できます。

刑事告訴の受理・不受理、あるいは起訴・不起訴の判断をする検察を抱える法務省として、また法務大臣として、この木原氏の発言をどう受け止め、解釈しているのでしょうか。御教示ください。

【大臣】せっかく御質問いただいたのですけれども、本件は捜査機関の活動内容に関わる事柄でありますので、法務大臣の立場としてこうだああだと言うことは差し控えるべきだろうと思っていますけれど、一般論として申し上げれば、検察当局においては、仮に告訴状の提出がなされた場合には、告訴状の内容を精査して告訴の要件を満たしているか否かを判断して、これを満たしているものについては受理した上で、法と証拠に基づいて、適切に対処するということになろうと思っていますが、現時点でそれ以上のお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

「同性パートナーシップ」考える

記者コラム

法務省は8月末、離婚後も父母双方に子供の親権を認める「共同親権」の導入に向け、そのたたき台となる民法改正要綱案を家族法制部会(法相の諮問機関)に示した。父母が協議して共同親権も選べるようにするのが柱だ。

7月末の法相記者会見では、事実婚のカップルにも共同親権を認めるなど婚姻に準じた法的保護を与える制度創設という、愛知県からの要請が話題となった。同県は来年度から、LGBT(性的少数者)を含むすべてのカップルとその子供を公的に「家族」とみなす「ファミリーシップ制度」を導入する方針だ。この制度の下で、離婚時に共同親権が選択可能となった場合、同性カップルにもそれが適用されなければ、同じ家族なのに「差別だ」との主張が出るだろう。

現在、同性カップルを「婚姻相当」と見なすパートナーシップ制度導入は約330自治体に及び、婚姻制度は地方から崩れている。「同性カップルだから子供の問題はない」と思われがちだが、そうではない。結婚して生まれた子供を、離婚後に育てている同性愛者や両性愛者が同性と同棲するケースが少なくなく、それがパートナーシップやファミリーシップの恩恵を受けるようになっている。事実婚カップルにも共同親権を認めよという国への要請は当然、同性カップルも念頭に行われている。

このまま「家族」の概念を変える制度を導入する自治体が増えれば、国の家族制度にも影響を及ぼすのは必至。男女カップルが離婚しても、子供との血のつながりは切れるわけではないから、共同親権に一定の合理性がある。その点、同性カップルは根本的に異なる。同性カップルへの共同親権適用問題は「家族」の概念を変えることの是非について、「子供の利益」の観点から一度立ち止まって考えるべきだ、と示唆している。(M)