松田学の国力倍増論(23)
松田政策研究所代表 元衆議院議員 参政党前代表
「ほぼトラ」を日本のチャンスに、報道されざる不都合な真実
もはや「もしトラ」ではなく「ほぼトラ」とされる米大統領選だが、ロバート・エルドリッヂ氏によると「米国にはもはや公正公平な民主主義などない、それがトランプ氏の再選を阻む…」。米国の公的機関もメディアもグローバリズム勢力に支配され、情報が偏向報道であることに大半の米国民が気づいているようだ。だから、起訴されるたびにトランプ氏の支持率が上がる。他方で民主党側は不法移民にも投票権を与えたり、バイデン氏に代わりミシェル・オバマを指名するとの見方もあり、11月の本選は、まだ波乱含みのようだ。
主要メディアが伝えない不都合な真実
それにしても日本のマスメディアはグローバリズム勢力が操る米民主党のはしためなのか? トランプ=トンデモナイと考える日本国民は真実をあまりに知らされていない。この認識は、今やその半数近くがトランプ氏を支持している米国民に対して失礼でもあろう。
日本の政界は政治とカネの問題で大騒ぎだが、米国は日本とは比較にならないほどカネが政治を支配している。ウォール街、ネオコンに代表される軍産複合体、今回のコロナパンデミックで危険性の高いワクチンを世界中の人々に接種させた「医産複合体」、米国主要メディア、ITプラットフォーマー…これらグローバリズム勢力の支配にとって都合の良い大統領がカネの力で誕生してきたが、自らが富豪であるためこれに依存せず、国民国家の立場で彼らに反旗を翻したのがトランプ氏だった。もはや対立軸は民主対共和というよりも、「少数のグローバル勢力」対「大多数の国民」とも言われる。
これは決して「陰謀論」ではなく、この構図を知らずしてもはや現在の世界は読めないだろう。例えば、トランプ再選でアメリカ・ファーストが再来し、世界は不安定になる? 米国がトランプ政権の4年間だけ戦争を起こさない国だったことを忘れてはならない。
トランプ氏ならば、親しいネタニヤフに直ちに停戦せよと説得するとの見方がある。米国が支援をとめればイスラエルは継戦が困難になるからだ。これはウクライナ戦争も同じである。なぜウクライナ軍事支援に9兆円も出すのか、それよりメキシコ国境の壁だ、との声が広がっている。今般辞任した国務省某高官が「その9割は米国の会社(軍事産業)に回るから問題ない」と失言したが、やはりこれが戦争が終わらない真因であることを伺わせる発言だ。米国という国家自体がネオコン勢力の目的達成の手段として使われてきた。
軍事専門家からみれば、ロシアはウクライナに対して10倍の軍事力。米軍は今世紀に入ってから、LGBTやマイノリティ重視の「ポリコレ」と部品の国外アウトソーシングで内部から弱体化しているとされる。とてもロシアには勝てない中で軍事利権の思惑のまま戦い続ければ、プーチンが本気で核を使う世界大戦のリスクが高まる可能性もある。
そもそもこの戦争は、米国+欧州+ロシアの提携とロシアのNATO加盟というプーチンの提案を蹴ってきた西側が誘発したものであるとの真実が暴露されるに至っている。プーチンには領土的野心はなく、NATOの脅威から自国を守るという為政者としては当然の判断から戦争に踏み切った…だいぶ前から休戦を申し出ているのに、戦争継続をしたいNATO側が乗らない…タッカー・カールソン氏による西側として初のプーチン氏へのインタビューで見せた同氏の賢明さ、見識の深さは、メディアが伝えたくなかった真実だった。「プーチンは気が狂った侵略者だ」…戦争の際は必ずプロパガンダ戦が行われるものだ。
ウクライナはもはや、NATOからの支援なくしては戦えないボロボロの状態にある。いま直ちに必要なのは、ガザもそうだが、何はともあれ、これ以上、無辜の民や兵士たちの犠牲を増やさないための停戦だ。米下院で共和党が頑張って支援を停止にすれば停戦になる。トランプ再選こそが世界平和への道であり、日本も外交路線の大転換を迫られよう。
ウクライナ戦争の本質とは
西側主要メディア以外の情報源や軍事専門家たちの冷徹な分析を踏まえれば、ウクライナ戦争の真実は概ね次のようになるが、これらについて、読者はどこまでご存知だろうか。
①プーチンのウクライナ侵攻は国際法違反ではあっても、本質はロシアの自衛のための戦争である。これ以上、犠牲を拡大しないよう戦争をやめさせるには、ロシアが占拠した東部4州のロシアへの割譲をもって停戦するしか答えはない。同じ「力による現状変更」といっても、ロシアの場合は自衛であり、侵略の意図を持つ中国とは全く事情が異なる。
②多数がロシア系住民である東部2州に自治権を与えたのがミンスク合意。これを破ろうとしたのがゼレンスキーだった。戦争を起こしたのは実はウクライナ側である。なぜなら、ウクライナのNATO加盟はロシアの国防を丸裸にすることになり、これはロシア国家存亡の危機であり、2州の自治権を通じてウクライナのNATO加盟が阻止されていたものだったから。
③フルスペックの集団的自衛権のNATOが東方拡大をすることに対し、自国を守ることは為政者として当然のこと。国家の危機にあっても為政者が何もしないのは世界では日本だけ。ロシアの領土的野心はウソ。ロシアがNATO全体と戦おうとするのは自殺行為。あり得ない。今回のウクライナ侵攻が自国防衛であるからこそ、国民はプーチンに対し絶大な支持。
④このまま戦争が続けば、確実にロシアがウクライナ全土を取ることになる。ウクライナは緩衝地帯であってこそ国際秩序が維持されるのであり、そうでなくなることを避けるという実利こそが優先されるべき。プーチン側は東部4州のロシアへの割譲をもって停戦を提案してきた。全領土の奪還に固執するゼレンスキーこそ、事態を世界大戦に導こうとしている。
⑤そのゼレンスキーはもはや、ウクライナ国内で軍からも国民からも見放されている。自身の保身のため戦争を続けようとしている。ゼレンスキーに万歳で、支援を申し出ている日本は何をしているのか。ウクライナ敗北という結果は米国の外交の大失敗となり、これに追随した日本の岸田政権も大失敗だったことになる。今年はその責任が問われる年になるかもしれない。
新しい世界秩序へ日本の役割
今回ほど日本に直接的な大きな影響を与える米大統領選はない。トランプ氏支持のMAGAのみならず、世界で広がる草の根の反グローバリズム運動や、中ロが主導するグローバルサウスの台頭が、自立した主権国家を軸とする新しい世界秩序の形成につながろうとしている。その中で日米関係については、トランプ政権時代に最良のものとなったことを想起すべきだが、それは当時の安倍総理がトランプ氏を指導したからであることも忘れてはならない。トランプ再選は、日本にとっては真の独立を達成するチャンスにもなるが、そのためにも日本は対米関係を「提案型日米関係」にする必要がある。
ここで問われることになるのは、日本が自ら独自の世界戦略や政策など、提案できるものを生み出す力を持てるかどうかだ。エルドリッヂ氏は日本に、民主主義が崩壊した米国に民主主義を届けてほしいとしているが、例えば、住民票の制度がないことが米国では不正選挙の温床であり、実は世界に冠たる戸籍制度なども民主主義の基盤なのである。日本は堂々と、自国が長年にわたって営んできた国柄や制度を大切に維持しつつ、これをもって世界にモデルを示していく国になることが求められている。
日本の主体的で積極的な役割を大きくすることが、トランプ再選後の世界秩序を安定させる…日本の政界は早く、内向きの「裏金問題」から卒業して、次に備えねばならない。
松田 学
1981年東京大学卒、同年大蔵省入省、内閣審議官、本省課長、東京医科歯科大学教授、郵貯簡保管理機構理事等を経て、2010年国政進出のため財務省を退官、2012年日本維新の会より衆議院議員に当選、同党国会議員団副幹事長、衆院内閣委員会理事、次世代の党政調会長代理等を歴任。その後、未来社会プロデューサーを名乗り、言論、発信活動を展開。2020年に参政党を結党し、22年7月~23年8月に国政政党としての同党代表を務めた。