昔から続く水争い、現代事情?
AI、半導体産業で水大量使用

夏は暑いものだが、今年は「酷暑の夏」だった。

しかも、台風が来る前の8月上旬まで、雨はほとんど降らずダムの水は枯れる寸前までいっていた。多くの米農家は、川から水を引くことを水利組合から制限され、天を仰いだのも今夏のことだ。

人類の歴史は、戦争の歴史でもあったが、太古から長く変わらない争い事の火種は水争いだった。農業の必須条件の1つは水であり、渇水期に川の上流域と下流域では絶えず水利権をめぐってもめた。

その水使用量が近年、急速に増加している。

1930年代半ば、人間1人の平均的水使用量は年1000立方㍍だった。

30年後には、その2倍の2000立方㍍に、さらに2000年には4000立方㍍になった。

世界気象機関は、2025年には5000立方㍍になると予測している。

1930年半ばが1000立方㍍だから、実に90年で人間の水使用量は5倍に増えることになる。

さらに近年、企業による水使用量が増えている。

世界を俯瞰すれば、水使用の主なものは農業で、全使用量の約7割を占めている。

近年は工業用水も増えてきた。

その1つが半導体産業だ。半導体というのは特殊な物質を加えることで、電気特質を出しているので不純物が混じると性質が変わってしまう。

そのため不純物を洗い流すため、純度の高い水が大量に必要となる。半導体が高度になればなるほど、その水使用量はさらに増えていく趨勢にある。

世界最先端の半導体企業である台湾のTSMCが、熊本県への工場進出を決めたのも、熊本には地下水が豊富にあることが誘致のバーゲニングパワーを発揮した経緯がある。

さらに人工知能(AI)の製造にも、大量の水が必要となる。

大手IT企業はサーバーの熱を冷却水で冷やす必要があるため、データセンターが周辺地域の水不足に拍車をかけてしまうのではと懸念を抱くようになってきた。

昔から続く水争いだが、近年は半導体産業やAI産業といったIT関連の新産業が水争いの新規参入者として参画し、産業間での水の奪い合いが懸念されるようになっている。