永田町ファイル

記者会見 3・1

上川陽子外相

ODA70周年

【大臣】今年は、我が国のODAが始まって70周年という節目の年であります。昨年6月に改定しました開発協力大綱にも明記しているとおり、国際社会が複合的な危機に晒されている中で、危機の克服のための開発協力、この役割は、一層重要となっております。

こうした中で、開発途上国にとっての民間資金の重要性は拡大しており、特に、環境、社会、ガバナンス課題の解決を目的とした「サステナブル・ファイナンス」の重要性は、これまで以上に高まっていると言えます。

このような開発のための新しい資金動員の方策を検討し、官民を問わず、様々な主体との連携を強化すべく、本日、3月1日、私の下に、「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」を立ち上げることといたしました。

同会議では、開発のための新しい資金動員において、ODAが触媒として果たしうる役割を含めて、議論をいただいた上で、最終的にODAの在り方についての提言、これを取りまとめていただく予定であります。

【記者】冒頭の御発言に関連して伺います。大臣、かねてより、外交における国民の理解の重要性というのを強調されていますけれども、ODAに関して、国民の理解を広く得ていくために、どのような説明や発信が必要とお考えなのか、その点をお願いいたします。

【大臣】我が国は、責任ある主要国として、全ての人が平和を享受できるよう、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するとともに、人間の尊厳が守られる安全・安心な世界を実現するための外交、これを推進していかなければならないと考えております。

そのため、外交の重要なツールの一つでありますODAを、一層、戦略的、そして効果的に活用し、開発途上国の課題解決と同時に、途上国との対話と協働、これを通じまして、社会的価値を共に創る、共創により、我が国の国益実現にも資するよう努めてまいります。本日立ち上げます「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」は、こうしたODAの戦略的・効果的な活用のための新たな試みの一つであります。

ODAは、公的資金を原資としておりまして、国民の皆様の理解と協力に支えられていることは言うまでもございません。ODAが、国民の平和と安定を確保し、国民生活の維持、また、日本の成長、これに寄与していること、そして、そのためのODAの在り方については、不断に追求していくということを、私自身先頭に立って、丁寧に説明してまいりたいと考えております。

【記者】中東情勢の件で伺います。中東に出張されました辻󠄀外務副大臣がラマッラで、一部メディアの方に対して、UNRWAの件ですけれども、「疑惑が解明された瞬間に援助ができるような準備もしているし、打ち合わせもしている」と御発言されています。UNRWAへの資金拠出再開への、調整状況やその必要性、また、これは、あくまで国連の調査結果を待つという姿勢でお変わりないのか、お考えを伺います。

【大臣】我が国は、UNRWA職員への疑惑を極めて憂慮しております。UNRWAは、パレスチナ難民を対象とした保健・医療、そして、教育、福祉分野のサービス提供など、不可欠な役割を担っておりまして、UNRWAが、信頼を取り戻し、こうした本来の役割をしっかりと果たすことができるよう、ガバナンスの強化を含めまして、適切な対応がとられるということについては、強く求めてきているところであります。

UNRWAへの拠出再開の見通しにつきましては、予断をもってお答えすることはできませんが、我が国といたしましては、国連やUNRWA、また、関係国と緊密にコミュニケーションをとりつつ、まずは、国連による調査、また、第三者による検証、これに積極的に協力してまいりたいと考えております。

【記者】中東情勢の関連で伺います。イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が続く中、現地の保健当局は、食料などの支援物資を待っていた住民112人が、イスラエル軍の攻撃で死亡したと発表しました。ガザ地区でのこれまでの死者は、3万人を超えたとしていて、人道危機が一段と深まっていますが、これについての大臣の受け止めを伺います。

【大臣】現時点で、事実関係そのものを、あまり予断することにつきましては控えさせていただきますが、多数の民間人が死傷したことについては、大変心を痛めておりまして、心から哀悼の意を表したいと思っております。

戦闘が長引く中におきまして、連日、多数の子供たち、また、女性、高齢者を含む死傷者が発生するなど、現地の人道状況は、もはや看過し得ない、危機的な状況にあると感じております。

人道支援活動が可能な環境の確保、また、人質の解放につながる人道的停戦、これが速やかに実現をし、そして、持続可能な停戦が実現することを強く期待しております。こうした考えの下におきまして、イスラエルを含む当事者に対して、直ちに人道的観点から行動することを求めてまいりました。

我が国といたしましては、改めて、人質の即時解放、人道状況の改善、そして、事態の早期沈静化に向けまして、外交努力を、引き続き、粘り強く行うなど、あらゆる努力を傾注してまいりたいと考えております。

【記者】ガザの状況について質問します。原則としてイスラエルは国際社会からの要求や要請に耳を傾けていませんし、米国も国連で拒否権を発動してイスラエルの作戦を支持しています。また日本は国際司法裁判所によるガザでのジェノサイド非難ほど、イスラエルによる破壊を非難していないようです。また、イスラエルはガザやパレスチナを侵略し、日本政府が反対する力による現状変更を行っています。イスラエルはその方針や行為について厳しく非難されるべきとお考えでしょうか。イスラエルはガザで大規模な破壊を行っていますが、ガザの人々は国際社会で公正な扱いを受けていません。ありがとうございました。

【大臣】これまで述べてきているとおりでございまして、我が国といたしましては、イスラエルが、ハマスの攻撃を受け、国際法に基づいて自国及び自国民を守る権利を有すると認識しております。同時に、全ての行動は、国際法に基づいて行わなければならない。いかなる場合におきましても、国際人道法の基本的な、この規範、これは守らなければならないと考えております。

一方で、事実関係を十分に把握することが困難である中におきまして、このイスラエル軍の行動につきましては、確定的な法的な評価をすること自体、適当ではないと考えておりまして、この間、法的評価をすることは差し控えてまいりました。そうした状況の中で、民間人の犠牲者数がますます増加している中にありまして、軍事行動が、全体として、国際法上正当化されるかどうかにつきましては、当事者による一層の説明が求められるような状況となっていることについては確かでございます。

いずれにいたしましても、日本として、人質の即時解放、並びに一刻も早い現地の人道状況の改善及び人道支援活動が可能な環境の確保のため、関連する安保理決議に基づき、誠実に行動をする、そうしたことを強く求めてまいります。また、日本として、人道支援活動が可能な環境、これを確保し、また、人質の解放につながるような人道的停戦が速やかに実現し、そして、持続可能な停戦が実現すること、これを期待し、当事者に対しまして、直ちに人道的観点からの行動をすることを求めているところでございます。

【記者】おととい、都内の講演で、大臣、3月18日に国連安保理議長国として、核軍縮・不拡散をテーマにした閣僚級会合を開くと表明されました。これに関して改めて意義を伺いたいんですけれども、とりわけ、核保有五大国といわれる米中露英仏が、安保理の常任理事国ですので、保有国を動かすと言ってきた政府としたら、非常に、その核軍縮というのを訴えていく好機だと思うんですけれども、そのあたりの見解をお願いします。

【大臣】まず、会合の開催の意義、これにつきましての御質問がございました。

核軍縮をめぐります情勢が一層厳しいものになっている今こそ、「核兵器のない世界」の実現に向けましては、核兵器国の協力を得ながら、現実的かつ実践的な取組を着実に進めていく必要があると考えております。

こうした文脈におきまして、NPT運用検討会議の中間年にあたりまして、我が国が、安保理議長国であります今月、安保理で核兵器の参加を得て、「核兵器のない世界」の実現に向け、議論を行うこと、これは、有意義であると考えております。

昨年5月のG7広島サミットの際に発出した、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」等の成果も踏まえつつ、核兵器国・非核兵器国間で実質的な議論を加速化させることを目指したいと考えております。

続きまして、会合の形式につきましてのお尋ねがございましたが、会合の形式は公開ブリーフィングという形式として行う予定でありまして、安保理理事国15か国による会合で調整しているところでございます。

国際の平和と安全の維持につき、主要な責任を有し、核兵器国が参加する安保理という場の特性、これを生かし、実質的かつインテンシブに議論するための最善のフォーマットが何か、また各理事国との議論や、またこれまでの前例等を踏まえまして、引き続き調整してまいりたいと考えております。

【記者】確認で関連で伺います。先ほどの確認で、まず、安保理国以外からも、関心が、日本がこういうことをやるということで、関心が高まっているんですけれども、安保理国以外のメンバーに対して門戸を開くのかということと、もう一つ成果文書のようなもの、成果文書ですね、採択をしたいという考えがあるのかどうか、この2点を改めてお願いします。

【大臣】形式については、今、調整している状況でございますが、基本的には、公開ブリーフィング形式として、安保理理事国15か国による会合で調整している状況でございます。

そして、成果文書につきましては、この成果文書の採択を含めます詳細について、現時点では何ら決まってはございません。

昨年、まさに5月、G7広島サミットの際に発出いたしました、「核軍縮に関するG7の首脳広島ビジョン」等の成果を踏まえつつ、こうした実質的な議論、これを核兵器国と非核兵器国関連で加速をさせるということについては、しっかりと目指してまいります。

【記者】日本の死刑制度についてお伺いします。日本の死刑制度は、様々な理由で、EUの国々に批判され、問題視されています。大臣は、EUの国を訪問した際に、そういった指摘を受けたことがありますでしょうか。また、海外からの死刑制度に関する批判への答弁をお聞かせください。

【大臣】まず、死刑制度についての御質問でありますが、死刑制度そのものにつきましては、外務省の所管ではございませんけれども、死刑制度に関しましては、様々な議論があるということについては承知しているところであります。

死刑制度の存廃についてでありますが、これは、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題でございまして、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等、様々な観点から、慎重に検討すべき問題だと考えております。

各国のカウンターパートとの会談におきまして、必要に応じて、このような我が国の考え方につきまして説明してきているところでありますが、外交上のやり取りということでございますので、その詳細につきましては、お答えについては差し控えさせていただきたいと思っております。

【記者】政治と金の問題をめぐって、昨日から政倫審が開かれまして、現職総理大臣が初めて出席するというような事態になっております。総理自らが率先する、率先して出席するということを、評価する声もある一方で、実際の説明内容には、不満も出ています。真相究明や説明責任、国民の理解に繋がるものになったと言えるのか、主要閣僚の1人である大臣の御見解をお願いします。

【大臣】今回の政治資金をめぐる問題につきましては、国民の皆様からの信頼、この回復の必要性、このことについては大変重く受け止めております。

昨日の衆議院の政治倫理審査会に、岸田総理自らが出席され、政治資金をめぐります、国民の厳しい目や、また疑念、これを踏まえまして、自民党総裁として、説明を尽くすべく、努められたものと受けとめているところであります。

内政も外交と分けて考えることはできないと考えておりまして、私自身も、就任以来申し上げておりますとおり、国民の皆様に理解をされ、また、国民の皆様から支持される外交、これを展開するとの姿勢で進めてまいりたいと申し上げてきたところでありますが、そういった方針につきましては、外交の場面の中でも、引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

【記者】先ほど発表された対露追加制裁の関係で伺います。新たに、12個人8団体の資産凍結ですとか、ロシア産ダイヤモンドの間接輸入の禁止など盛り込まれましたけれども、今回の制裁の狙いがあれば伺います。

【大臣】ロシアによりますウクライナ侵略が開始されて2年となります。2月24日に、G7首脳テレビ会議が開催されました。G7として、対露制裁を強力に推進していくということを改めて確認したところであります。同会議におきましては、岸田総理からも、追加的な制裁措置をとるということを表明したところであります。

この追加的な措置につきまして、我が国として、必要な閣議了解を行ったところであります。

その内容につきましては3点ありまして、まず、第一は、資産凍結や、また、輸出禁止等の対象となるロシアの個人・団体の追加指定を行うこと。また、二点目として、ロシアの産業基盤の強化に資する物品の輸出禁止、そして、三点目として、ロシアを原産地とする非工業用ダイヤモンドの間接輸入の禁止であります。

今後も、我が国といたしましては、G7を始めとする国際社会と連携して取り組んでまいりたいと考えております。