西表島のツアー業者、町を提訴

事業継続不可能、刑事告訴も視野に

竹富町条例、観光客制限は「違憲」

イリオモテヤマネコで有名な西表島は2021年、世界自然遺産に登録されたこともあり観光客に人気が高い。その観光熱に水を差すような条例が竹富町から出されたことに反発した西表島のツアー業者が那覇地裁に訴状を提出、竹富町を提訴した。

提訴したのは西表島などでツアービジネスを営む(株)NASH(奥田光三郎代表取締役、本店=西表島上原)で、同町が科した制限取り消しと、その制約を受けることなく自由に営業できる権利を主張する当事者訴訟を起こした。さらに同社は、裁判中に町が定める制限を受けずに営業できるよう求める仮処分命令申立書、陸域での観光客制限の効力を止める執行停止申立書も那覇地裁に提出する見込みで刑事告訴も視野に入れている。 訴状で原告は、陸域あたりの制限を違憲とし「案内客数制限を超えてツアー業務を運営することができなくなり、制限を受けることなく営業することができる権利を奪われている」と主張、「制限の真の目的が、原告以外の小規模事業者の保護にある」と訴える。

竹富町は昨年11月から、ツアー参加者数を制限。マングローブが人気の「クーラ川」ツアーでは、ガイド1人につき案内可能な1日当たりの観光客数は8人、1事業者につき16人まで、仲間川のカヌーなどではガイド1人につき案内可能な1日当たりの観光客数は12人以内、1事業者につき24人以内と制限が設けられた。

同条例41条には罰則規定があり、関係法令の違反や全体構想の内容に反した場合、5万円以下の過料。36条には免許取り消し事項もある。現在、ガイド事業を認められた免許交付を受けた事業者は115に上るという。ただ海で行うダイビング、スノーケリング、釣りなどのガイドや、集落内の歴史ガイドなどは本免許制度の対象外となっている。

このツアー参加者数制限条例の大波を受けている(株)NASHの奥田光三郎社長は、「条例制定前は1日で200人以上を案内するときもあり、90%以上の顧客減が想定される」とし、「年間売り上げは2022年に約1億7400万円あったものの、条例制定後は870万円程度と往年の5%程度に急減する見込みで、「事業および雇用の継続は不可能」と窮状を訴える。

さらに同社長は「環境保護のため、観光客全体の総量制限であれば理解できるが、町の条例は大規模事業者を狙い撃ちにした不平等なものだ。事業者単位で制限をかけても、他の事業者に観光客が流れるだけで意味がなく、環境負荷は変わらないままで、オーバーツーリズムすら解決していない」とモグラたたきのような意味のない条例を批判する。

また、同社側は制限そのものについて、観光客増加を前提として導入されたものの、西表島を訪れる観光客は2007年の40万6000人をピークにコロナ禍前の19年は29万人にまで減少していることから、増加傾向を裏付ける証拠は存在せず、制限に正当な理由があるとは言えないとしている。